元気になるオルソペディック ブログ
椎間板ヘルニア手術の全内視鏡手術のメリットとは?全内視鏡 vs 開放手術を徹底比較!
【腰椎椎間板ヘルニアとは?手術を選ぶ前に知っておきたいこと】
腰椎椎間板ヘルニアは、背骨の骨(椎骨)の間にある「椎間板」という軟骨が飛び出し、神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こす病気です。特に30~50代の働き盛りに多く、日本でも毎年多くの患者さんが悩んでいます。
ヘルニアの多くは自然に小さくなったり、薬やリハビリで改善することもあります。実際、**約85%の患者さんが手術をしなくても回復すると言われています。
しかし、激しい痛みが続いたり、足の筋力が低下したり、排尿に障害が出るような神経の異常が進行した場合は手術が必要です。その手術として行われるのが「椎間板摘出術(ディスケクトミー)」です。
---
# 【全内視鏡手術と開放手術:どちらが安全?大規模研究の結果】
椎間板摘出術には、大きく分けて2つの方法があります。
*開放手術(Open Discectomy, OD):皮膚をある程度の大きさを切開して筋肉を骨から剥がして展開し、椎骨の一部を削り、直接ヘルニアを取り除く従来の手術法です。
全内視鏡手術(Full-Endoscopic Discectomy, FED):直径7~8mm前後の小さな穴から、カメラ付きの細い器具(内視鏡)を挿入し、映像を見ながらヘルニアを除去する方法です。筋肉や骨へのダメージが少なく、身体への負担が軽いのが特徴です。
2025年に発表された米国の大規模研究では、2,618人の患者(OD:1,309人 / FED:1,309人)を対象に、合併症、痛み、再手術率を比較しています。
---
## ✅ 合併症の比較:FEDが圧倒的に低リスク
| 合併症 | 開放手術(OD) | 全内視鏡手術(FED) | 有意差 |
| ----------- | -------- | ----------- | ----------- |
| 硬膜損傷(髄液漏れ) | 1.15% | 0.15% | あり(p=0.006) |
| 手術部位感染(SSI) | 1.15% | 0.08% | あり(p=0.001) |
| 創部合併症 | 1.07% | 0.38% | あり(p=0.023) |
| 再度の硬膜修復 | 0.69% | 0.08% | あり(p=0.021) |
特に注目すべきは、全内視鏡手術では感染や出血のリスクが非常に低いことです。これは、切開が小さく、筋肉をほとんど切らずに手術ができるためと考えられます。
---
✅ 術後の痛みと再手術率の比較
術後90日以内の持続的な痛み
* OD:2.83%
* FED:2.22%
* → 有意にFEDの方が少ない(p=0.048)
2年以内の再手術率(再度の手術や他の脊椎手術)
* FED:再手術(再度の内視鏡)3.67%
* OD:開放手術への再手術 1.45%
* → ただし統計的には有意差なし(p=0.547)
つまり、全内視鏡手術の方が術後の痛みは少ないという結果が出ていますが、長期的な再手術率に関しては明確な差はない**という結果になっています。
---
# 【全内視鏡手術はどんな人に向いている?そのメリットとは】
✅ 全内視鏡のメリット
* 皮膚や筋肉をほとんど切らないため、**術後の痛みが少ない
* 傷が小さいたい、感染リスクや創部トラブルが少ない
* 回復が早く、仕事や日常生活への復帰が早い
高齢者や持病がある方でも負担が少ないため選ばれやすい
今回の研究では、FEDを受けた患者の方が年齢が高く(平均59歳)、持病の多さを示すCCIスコアも高いという傾向がありました。これはFEDが「身体に優しい手術」として選ばれている証拠といえます。
### ❗ 全内視鏡が向かない場合もある
* ヘルニアが非常に大きい
* 脊椎の変形が強い
* 再発例で癒着が強い
*だれでもできる手術ではない
このようなケースでは、視野を広く取れる開放手術の方が安全な場合もあります。
---
#【まとめ:全内視鏡手術という選択肢が広がる時代へ】
今回の研究結果から、全内視鏡手術(FED)は開放手術と比べて明確に合併症が少なく、術後の痛みも少ないことが示されました。
すべての患者さんに適しているわけではありませんが、「体に負担の少ない手術」を希望する方にとって、FEDは非常に有力な選択肢です。
手術が必要かどうか悩んでいる方は、整形外科専門医や脊椎外科医とよく相談し、**自分の症状や生活スタイルに合った治療法を選ぶことが大切**です。
引用論文
> Perez-Albela A, Singh M, Kim J, et al.
> **Open versus Endoscopic Lumbar Discectomy: A Propensity-Matched Analysis of 2,618 Surgical Patients.
> *Spine*. Accepted 2025. DOI:10.1097/BRS.0000000000005404
---
免責事項
- 当ブログの内容はブログ管理者の私的な考えに基づく部分があります。医療行為に関しては自己責任で行って頂くようお願いいたします。
- 当ブログの情報を利用して行う一切の行為や、損失・トラブル等に対して、当ブログの管理者は何ら責任を負うものではありません。
- 当ブログの内容は、予告なしに内容を変更あるいは削除する場合がありますのであらかじめご了承ください。
- 当ブログの情報を利用する場合は、免責事項に同意したものと致します。
- 当ブログ内の画像等は、本人の承諾を得て、個人が特定されないように匿名化して利用させて頂いております。
当ブログでの個別の医療相談は受け付けておりません。