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両膝の人工関節手術は同時?段階的?それぞれのメリットとリスクを徹底解説!
【両膝の人工関節手術とは?増える高齢者と進む選択肢】
膝の関節がすり減る病気「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」は、日本でも高齢化にともない急増しています。
日常生活に支障をきたす重度の症状に対しては、「人工膝関節全置換術(TKA)」と呼ばれる手術が一般的な治療法です。
この手術では、痛みの原因となる関節の表面を削り、金属や樹脂でできた人工関節に置き換えます。
近年では、両膝が同時に悪くなるケースも多く、両膝にTKAが必要な人も増えています。
その場合、手術には大きく2つの方法があります。
- 同時手術(Simultaneous TKA):一度の手術で両膝を同時に置換する方法
- 段階手術(Staged TKA):片膝ずつ、時期を分けて手術する方法
しかし、「どちらが安全?」「費用はどちらが安い?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
2025年に発表されたアメリカの大規模研究は、この2つの方法のメリット・デメリットを比較し、その違いを明らかにしました。
【最新研究が比較!同時手術vs段階手術の違いとリスク】
この研究では、2016年から2020年までの全米の入院データから、合計21万人以上の患者の手術データを分析しました。
その結果、次のようなことがわかりました。
✅ 医療合併症のリスクは段階手術で高め
Table 2:合併症の発生率
医療的合併症は段階的手術群で多く(10% vs 8.4%)、特に心不全、尿路感染症、DVT(深部静脈血栓症)の頻度が高いです。一方、外科的合併症は同時手術群で多く、特に輸血率が高い(6.3% vs 2.0%)点が顕著です。段階的群では関節感染や人工関節周囲骨折が多い傾向もありました。
- 段階手術を選んだ人の方が、心不全・肺塞栓・尿路感染・脳卒中などの医療的な合併症が多く見られました。
- 特に「心不全」のリスクは、同時手術の2倍以上という結果でした。
ただし、これらの合併症のリスクが高い理由のひとつとして、もともと基礎疾患がある「ハイリスク患者」が段階手術を選択する傾向があることが挙げられます。
つまり、段階手術を選んだこと自体がリスクを上げたのではなく、リスクが高い患者に対して安全性を優先して段階手術が選ばれている、という可能性が高いのです。
このような患者背景の違いが、医療合併症の発生率に影響していると考えられます。
✅ 外科的合併症(出血や感染)のリスクは同時手術で高め
- 一方、同時手術では、出血や輸血が必要となるリスクが高い傾向が見られました。
- 1回の手術で2つの膝を一度に手術するため、出血量が多くなるのは想定内とも言えます。
しかし、驚くべきことに、関節の感染や手術部位の感染については、段階手術の方が高リスクであることが分かりました。
これは2回の手術によって、感染の機会が増えることが理由と考えられます。
✅ 再手術・再入院の可能性も段階手術で増加
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