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3Dプリンターが医療を変える!脊椎手術の精度を高める術前計画とは?
【3もう"勘"に頼らない!Dプリンターが手術の成功を導く!術前計画の新常識】
最近では、医療分野において3Dプリンターの活用が急速に進んでいます。
中でも注目されているのが、脊椎(背骨)手術の術前計画への応用です。
これまで外科医は、レントゲンやCT画像などの2次元情報を元に、頭の中で立体を想像して手術計画を立てていました。
しかし、骨の変形や過去の手術歴がある患者さんの場合、解剖の理解が極めて難しいこともあります。
そんな中、実物大の3Dモデルを用いて手術前にシミュレーションできる技術が注目を集めています。
【精密で安全な手術計画に!3Dプリンターの3つの効果】
①:骨の形を「立体」で把握できる
CTスキャンのデータから、患者さんごとの骨の形をそのまま再現した模型を3Dプリンターで作成できます。
実際の症例では、椎間孔(神経が通るトンネル)の狭窄(きょうさく=狭くなっている状態)があるケースで、
「どの骨を、どれだけ削るのか」を事前に模型を使って確認できました。
その結果、手術中の迷いが減り、最小限の操作で最大の効果を得ることが可能になりました。
②:再手術や変形のあるケースでも精度を保てる
すでに過去に手術を受けている方や、強い骨の変形がある方の場合、
画像だけでは正常な解剖構造の予測が難しいという課題があります。
3Dモデルを使えば、再建された骨の状態を直接手に取って確認でき、
通常では見えにくい部位まで正確に術前計画が立てられます。
再手術のリスクを減らし、安全かつ効率的な手術に大きく貢献しています。
③:若手医師の教育やチーム医療にも有効
3Dモデルは手術を担当する医師だけでなく、
手術室スタッフや研修医にとっても理解しやすい視覚教材となります。
特に複雑な症例においては、チーム全体で同じイメージを共有できることが重要です。
これにより、手術中の連携がスムーズになり、時間の短縮と安全性の向上にもつながります。
【高精度なのに低コスト!3Dプリンターの実用性】
「3Dプリンターって高そう...」
そんなイメージを持つ方も多いかもしれませんが、実は非常にコストパフォーマンスが高いのです。
- 使用機材:15万円未満
- 1人あたりの模型作成コスト:約1,500円
さらに、今回使用された素材はABS樹脂というもので、
消毒可能で、手術中にも使用可能という利点があります(ただし滅菌範囲外で使用)。
このように、費用負担が少なく、導入しやすい点も、今後の普及を後押ししています。
【まとめ:3Dプリンターで進化する手術の「見える化」】
脊椎手術における3Dプリンターの活用は、単なる模型作成にとどまりません。
それは、医師の手術計画を「視覚化」し、「精密化」する強力なツールです。
特に以下のような患者さんにとって、3Dプリンターの効果は非常に大きいといえます。
- 骨の変形が強い方
- 過去に手術を受けた再手術のケース
- 骨盤の形状により器具の挿入が困難な方
これからの時代、"勘"に頼るのではなく、精密な予測に基づいた手術が主流になります。
その先駆けが、まさにこの「3Dプリンターによる術前計画」なのです。
患者さんにとっても、安心して手術を受けられる材料のひとつとなるでしょう。
【参考文献】
Okada R, Sakai T, Nishisho T, et al. Preoperative Planning Using Three-dimensional Printing for Full-endoscopic Spine Surgery: A Technical Note. NMC Case Report Journal, 9: 249-253, 2022.
doi: 10.2176/jns-nmc.2022-0077
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