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腰椎分離症に新たな治療法~体外衝撃波治療の最新研究~
【腰椎分離症とは?10代スポーツ選手に多い骨の疲労骨折】
腰椎分離症とは、背骨の一部である「関節突起間部」という箇所にヒビが入る疲労骨折のことを指します。特に中学生や高校生のスポーツ選手に多く見られ、繰り返される腰への負荷が原因です。
野球やサッカー、体操といった腰を反らしたりひねったりする動作が多い競技がリスクを高めます。治療には一般的に安静とコルセットを使った装具療法が取られますが、骨がうまくくっつかず、偽関節という状態になってしまうこともあります。
特に両側の分離や進行期・終末期と呼ばれる状態に進んでしまうと、将来的に「すべり症」へと進行し、慢性的な腰痛や神経症状を引き起こす可能性もあるのです。
【体外衝撃波治療(ESWT)とは?骨の癒合を助ける新しい選択肢】
体外衝撃波治療(ESWT)とは、音の衝撃を使って体の深部に刺激を与える治療法です。もともとは足底筋膜炎の治療として保険適応となっておりますが、最近では骨折や骨の癒合が遅れているケース(偽関節)でも使われるようになってきました。
衝撃波は骨にエネルギーを集中的に伝えることができ、骨の再生や癒合を促すとされています。今回の研究では、このESWTを腰椎分離症に応用し、その安全性と効果を確かめました。
なお、ESWTは日本では足底腱膜炎に対してのみ保険が適用されています。腰椎分離症に対する使用は現在のところ保険適用外であり、研究目的や自費診療で行われているのが実情です。
使用された装置はスイス製のDUOLITH SD1。患者さんの腰にX線透視を用いて分離部位を特定し、痛みの強さに応じたエネルギーで2週間ごとに3,000発を照射しました。
【研究の結果は?高い骨癒合率と安全性が確認】
研究には46人(64か所)の腰椎分離症患者が参加しました。年齢は平均14.6歳で、ほとんどがスポーツを行っている中高生でした。
結果として、全体の骨癒合率は78%で、平均治癒期間は約10週間。病期別では、
* 超初期と初期の患者では骨癒合率が100%
* 進行期で76%
* 終末期では10%にとどまりました
特に注目すべきは、スポーツを中止せずにESWTのみで治療を続けた22例が含まれていても、良好な結果が得られたという点です。これは、従来の安静や装具療法だけに頼った治療に比べ、より短期間で骨が癒合したことを示しています。
合併症についても、神経障害や靱帯の異常などは一例も確認されませんでした。治療の安全性も十分に担保されているといえます。
また、進行期の中でもESWTの効果にはばらつきがあり、どの患者がより効果を得やすいのかは今後の課題とされています。
【まとめ】
腰椎分離症は、成長期のスポーツ選手にとって非常に深刻な問題です。従来の治療法では治癒までに時間がかかったり、そもそも骨がくっつかないケースも少なくありません。
しかし、今回の研究により、体外衝撃波治療(ESWT)が有望な新しい選択肢であることが示されました。特に早期の段階で治療を始めれば、高い確率で骨癒合が期待でき、しかもスポーツを継続しながら治療が可能になるかもしれません。
もちろん、すべての患者に適応できるわけではなく、進行期や終末期には効果が限定的なこともあります。ESWTが腰椎分離症の新たな治療法となるためには、無作為化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)などエビデンスレベルの高い臨床試験などさらなる研究結果が必要となります。
【引用論文】
岩田秀平ほか.腰椎分離症に対する体外衝撃波治療の安全性と有効性.Journal of Spine Research. 2025;16(6):905-911. doi:10.34371/jspineres.2025-3029
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