成尾整形外科病院

脊椎外科(腰・首・肩・手足)・関節外科(肘・膝・股関節)を中心とした整形外科専門病院

熊本そけいヘルニア整形外科クリニック

元気になるオルソペディック ブログ

閉経後女性の骨粗鬆症に効く!効果的な筋トレ頻度・強度・期間とは?

 閉経後女性筋トレで骨密度上昇.png

【効果のある運動の種類】

閉経後の女性にとって、骨粗鬆症の予防と治療は非常に重要な課題です。骨密度(BMD)の低下は、骨折リスクの増加や生活の質の低下につながるため、効果的な対策が求められています。骨粗鬆症に対してはエビデンスの高い薬物療法があります。薬物療法以外では、自分でできる運動療法の注目が高まっています。なかでも、筋トレ(レジスタンストレーニング)は、骨の形成を促進し、骨密度を改善する有効な方法として注目されています。

大腿骨近位部骨折2.jpg

特に、骨粗鬆症によって引き起こされる大腿骨近位部骨折(いわゆる股関節の骨折)や椎体骨折(背骨の圧迫骨折)は、高齢者の寝たきりの大きな原因の一つです。研究によれば、大腿骨近位部骨折後の1年以内の死亡率は最大で20%に達すると報告されており、また椎体骨折は慢性的な腰痛や姿勢の悪化、呼吸機能の低下を生じると報告されています。これらの骨折は生活の自立を失う要因だけでなく生命予後の悪化となるため、骨粗鬆症の予防は高齢期の健康維持において極めて重要です。

大腿骨近位部骨折寝たきり.png

筋トレとは、重りや自重に対して筋肉を収縮させる運動のことです。スクワットやデッドリフト、レッグプレスなどが代表的です。今回の研究では、17件の無作為化比較試験(RCT)に基づき、690人の閉経後女性を対象に、様々な運動条件による骨密度への影響が分析されました。その結果、腰椎(LS)、大腿骨頚部(FN)、大腿骨全体(TH)において、筋トレが有意な骨密度の向上をもたらすことが示されました。一方で、大転子部(Troch)では、明確な改善は見られませんでした。

高齢女性筋トレ.png

この差は、各部位の骨にかかる力の違いや、トレーニング中に使用される筋肉群の影響によるものと考えられます。特に大腿骨頚部や腰椎は、トレーニングで直接的な負荷がかかりやすいため、骨形成が促進されやすいのです。

【頻度・強度・時間の最適条件】

では、どのような頻度や強度でトレーニングを行えば、より高い効果が期待できるのでしょうか。本研究のサブグループ分析では、以下の点が明らかになりました。

まず、トレーニング頻度については、週3回以上の運動が有効であることがわかりました。週2回以下の頻度では、効果が限定的である傾向がありました。これは、骨に対して継続的な刺激を与えることが重要であることを示しています。

次に、強度については、1回の最大挙上重量(1RM)の70%以上という高強度のトレーニングが、特に大腿骨頚部や大腿骨全体において効果的であることが確認されました。中等度(51〜69% 1RM)や低強度(50%以下)の運動では、骨にかかる刺激が不十分である可能性があります。

トレーニングの期間に関しては、48週間以上の継続が、特に大腿骨頚部と大腿骨全体で有意な骨密度の改善を示しました。逆に、腰椎では比較的短期間(24〜48週)でも効果が見られました。また、1回の運動時間が40分以上であることも、腰椎の骨密度改善に貢献することがわかりました。

【臨床応用と今後の課題】

今回の研究結果は、閉経後女性に対して、骨密度を改善するための具体的な運動処方のガイドラインとして応用できます。特に、週3回以上、70%以上の1RMという高強度の筋トレを48週間以上継続することが推奨されます。さらに、1回あたり40分以上の運動が望ましいとされています。

ただし、本研究にはいくつかの制約があります。対象となった研究の数が限られており、一部のサブグループでは試験数が少ないため、結果の一般化には注意が必要です。また、腰椎や大腿骨頚部では研究間の異質性が高く、効果のばらつきが見られました。これにより、集約された効果量の信頼性がやや低下している可能性もあります。

今後は、より大規模かつ高品質な臨床試験が必要です。さらに、栄養指導や有酸素運動との併用、個々の骨密度や健康状態に応じた個別化された運動プログラムの開発も重要な課題となります。加えて、運動が骨に与えるメカニズムについての研究も進められるべきです。

以上のように、適切な条件で行われる筋トレは、閉経後女性の骨密度改善に効果的な方法であることが確認されました。自分自身でできる運動で骨を強くするための第一歩として、今回の知見を日常生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。


【引用文献】

  1. Zhao F, Su W, et al. Optimal resistance training parameters for improving bone mineral density in postmenopausal women: a systematic review and meta-analysis. Journal of Orthopaedic Surgery and Research. 2025;20:523. https://doi.org/10.1186/s13018-025-05890-1
  2. Conti V, et al. A polymorphism at the translation start site of the vitamin D receptor gene is associated with the response to anti-osteoporotic therapy in postmenopausal women from Southern Italy. Int J Mol Sci. 2015;16(3):5452-66.
  3. Daly RM, et al. Exercise for the prevention of osteoporosis in postmenopausal women: an evidence-based guide to the optimal prescription. Braz J Phys Ther. 2019;23(2):170-80.

 

免責事項

  • 当ブログの内容はブログ管理者の私的な考えに基づく部分があります。医療行為に関しては自己責任で行って頂くようお願いいたします。
  • 当ブログの情報を利用して行う一切の行為や、損失・トラブル等に対して、当ブログの管理者は何ら責任を負うものではありません。
  • 当ブログの内容は、予告なしに内容を変更あるいは削除する場合がありますのであらかじめご了承ください。
  • 当ブログの情報を利用する場合は、免責事項に同意したものと致します。
  • 当ブログ内の画像等は、本人の承諾を得て、個人が特定されないように匿名化して利用させて頂いております。

当ブログでの個別の医療相談は受け付けておりません。