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内臓脂肪が慢性痛のリスクに?中高年は要注意!内臓脂肪と慢性痛を結ぶ"炎症"の正体とは
【内臓脂肪スコアMETS-VFとは?:慢性痛との意外なつながり】
最近、「内臓脂肪の量」が健康リスクだけでなく、慢性的な痛みとも関係している可能性が注目されています。
特に使われているのが「METS-VF(メッツ・ブイエフ)」という指標です。
これは、血液検査や体格データをもとに内臓脂肪の状態をスコア化したもので、CTなどの高価な検査を使わずに簡単に推定できるという利点があります。
具体的には、血糖、脂質、BMI、身長、性別、年齢などを総合的に評価して算出されます。
このスコアが高いほど、内臓脂肪が多いと考えられ、心臓病や糖尿病のリスクが高まるとされてきました。
今回の研究では、このMETS-VFと「3か月以上続く慢性の痛み」との関連性が、米国の大規模調査データを用いて解析されました。
【慢性痛との関連性:METS-VFが高いと痛みのリスクも上がる】
研究では、1999年から2004年にかけて行われた米国の「NHANES(国民健康栄養調査)」のデータから、18歳以上の約6,000人を対象に分析が行われました。
その結果、METS-VFが高い人ほど慢性痛を感じる割合が高いことが明らかになりました。
METS-VFが1ポイント増えるごとに、慢性痛のリスクが約1.46倍に上昇。
特にスコアが5.71以上になると、痛みのリスクがさらに顕著に増加する傾向が見られました。
また、体重やウエスト周囲長よりも、METS-VFの方が高齢者において慢性痛の予測精度が高かったこともわかりました。
これは、加齢によって体の見た目はそれほど太っていなくても、内臓の脂肪が増えやすくなるためと考えられています。
【炎症がカギ?CRPとの関係と今後の対策】
ではなぜ、内臓脂肪が多いと痛みが出やすくなるのでしょうか?
その鍵を握るのが「慢性炎症」です。
内臓脂肪は、単なる脂の塊ではなく、ホルモンや炎症物質を分泌する"活性組織"です。
この中には「CRP(C反応性タンパク)」と呼ばれる炎症マーカーを高める物質も含まれており、これが神経を刺激し、痛みの感覚を敏感にしてしまうのです。
実際、今回の研究でもCRPがこの関連性の約7%を媒介していたことが示されました。
ただし、他にも酸化ストレスや神経系の変化といった複雑なメカニズムも関与している可能性があります。
【運動で内臓脂肪を減らして慢性痛を和らげる:科学的に示された効果】
内臓脂肪と慢性痛との関係が明らかになる中で、「運動による脂肪燃焼が痛みの改善につながる」という科学的な報告が注目されています。
脂肪を燃やすだけでなく、体内の炎症を抑える働きもある運動は、まさに慢性痛に対する"薬に頼らない治療法"とも言える存在です。
▶ 有酸素運動で内臓脂肪が減少
ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、内臓脂肪を効率的に燃焼させることが知られています。
この内臓脂肪の減少は、脂肪から分泌される炎症物質(例:IL-6、TNF-αなど)を減らし、体内の炎症状態を改善することにつながります。
結果として、神経の過敏性が下がり、痛みの感覚が軽減されるというわけです。
▶ 筋力トレーニングも効果あり
筋トレなどのレジスタンス運動も、筋肉量を増やすことで基礎代謝を高め、脂肪の蓄積を防ぐ働きがあります。
また、筋肉からは「マイオカイン」という抗炎症作用を持つ物質が分泌され、慢性痛を和らげる方向に働くことが近年の研究で報告されています。
▶ 痛みの軽減に関わる「脳内物質」も運動で分泌
運動には、脳内のエンドルフィンやセロトニンといった"天然の鎮痛物質"を分泌させる作用もあります。
これらの物質は気分を良くし、ストレスを軽減するだけでなく、痛みの感じ方そのものを変化させる働きがあるのです。
▶ 実際の研究でも効果を裏付け
今回ご紹介した論文でも、運動習慣がある人ではMETS-VFと慢性痛との関連が弱まっていたことが示されています。
つまり、運動によって内臓脂肪をコントロールできれば、痛みの発症や悪化を予防・軽減できる可能性があるということです。
【まとめ:内臓脂肪の管理が慢性痛の新たなカギに】
今回の研究により、「METS-VF(内臓脂肪スコア)」は単なる肥満指標にとどまらず、慢性痛のリスク評価にも有効であることが示されました。
特に高齢者では、内臓脂肪の蓄積が痛みの引き金になっている可能性があるため、食事や運動を通じた内臓脂肪のコントロールが重要です。
慢性的な痛みに悩んでいる方は、体重だけでなく体の"中の脂肪"にも目を向けてみることが、新たな改善のヒントになるかもしれません。
今後、METS-VFを活用した予防・治療戦略が広がれば、痛みに悩む方のQOL(生活の質)向上に大きく寄与することが期待されます。
引用論文
Zhu J, Wang Y, Yu G, et al. Association between metabolic score for visceral fat and chronic pain: a cross-sectional analysis of NHANES 1999-2004. Front Nutr. 2025;12:1545774. doi: 10.3389/fnut.2025.1545774
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