成尾整形外科病院

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太る炭水化物・痩せる炭水化物の違いとは?体重管理に重要な"炭水化物の質"の意外な事実

 

 

【太りやすい炭水化物とは?24年間の追跡調査でわかった驚きの事実】

私たちの毎日の食事に欠かせない「炭水化物」。しかし、その炭水化物が私たちの体重や運動機能にどう影響するのか、詳しく知っている方は少ないかもしれません。最新の研究では、炭水化物の「量」よりも「質」が体重の増減、ひいては運動器の健康や健康寿命に深く関係していることが明らかになりました。

この記事では、整形外科専門医の視点から、アメリカで約13万人を対象に24年間にわたって行われた大規模研究の結果をもとに、炭水化物と体重、そして運動器の健康との関係についてわかりやすく解説します。

【1. 体重を増やす炭水化物の特徴:精製された炭水化物とでんぷん】

白米や白いパンなど精製された炭水化物.png

今回の研究では、精製された炭水化物(白米や白いパンなど)や、でんぷんを多く含む野菜(ジャガイモ、トウモロコシ、エンドウ豆など)、さらには加糖飲料や砂糖が体重増加と強く関係していることがわかりました。

加糖飲料や砂糖が体重増加.png

整形外科の観点では、体重増加は膝や腰などの関節に大きな負担をかけ、変形性関節症の進行や腰痛の悪化、骨折リスクの増加にもつながるため、無視できない問題です。具体的には、でんぷんを1日100g多く摂取すると、4年間で平均1.5kg体重が増加。加糖砂糖でも同様に0.9kg増える傾向がありました。

また、「グリセミック・インデックス」(GI)や「グリセミック・ロード」(GL)といった炭水化物の血糖値への影響を表す指標が高いほど、体重が増えやすいことも判明しました。これらは代謝を乱し、筋力低下やサルコペニア(加齢による筋肉量の減少)に間接的に影響する可能性もあります。

【2. 痩せやすくする炭水化物の正体:食物繊維と低GI食品】

でんぷんを多く含む野菜.png

一方で、体重の増加を防ぐ、または減らす効果のある炭水化物も存在します。それが「全粒穀物(玄米、全粒パンなど)」「果物」「非でんぷん質野菜(ブロッコリー、ニンジン、ほうれん草など)」です。

これらの炭水化物を1日100g多く摂ると、逆に体重は減少する傾向が見られました。たとえば、非でんぷん質野菜では平均3.0kg、果物では1.6kg、全粒穀物では0.4kg体重が減っていました。

運動器の健康を保つためには、膝関節や股関節に余計な負担をかけない体重管理が不可欠です。また、これらの食品に含まれるビタミン・ミネラル・食物繊維は、筋肉や骨の健康を支えるうえでも重要な役割を果たします。

【3. 食事の置き換え戦略:太る食品を痩せる食品にチェンジ】

研究では、炭水化物の「量」を減らすよりも、「太りやすい炭水化物」を「痩せやすい炭水化物」に置き換えることが有効であることも示されました。

全粒パンなど全粒穀物の食事.png

具体的には、白米やジャガイモ、加糖飲料を、全粒穀物や果物、野菜に置き換えることで、体重の増加を抑えることができます。たとえば、ジャガイモを果物に置き換えるだけで、4年間で1.7kgも体重の増加を抑えられるという結果もありました。

非でんぷん質野菜.png

整形外科医としては、これにより運動器疾患のリスクを減らし、歩行能力やADL(日常生活動作)の維持につなげられる点に注目しています。特に、高齢者においては転倒予防や骨折予防の観点からも体重管理は極めて重要です。

【まとめ】

今回の研究は、私たちが日常的に口にする炭水化物が体重に与える影響について、これまでになく詳細に示してくれました。その結論は明快です。

「太りにくい身体を作るには、炭水化物の量よりも質に注目するべき」

白米、白パン、砂糖、ジャガイモ中心の食生活から、全粒穀物、果物、野菜を中心とした食生活へシフトすることが、無理なく健康的な体重と運動機能を保つカギです。

肥満で関節腰痛.png

関節・筋肉・骨の健康を保ち、転倒や寝たきりを防ぐためにも、体重と食生活の管理を強く推奨します。健康寿命を延ばすためにも、今日から「炭水化物の質」に目を向けてみてはいかがでしょうか。


【参考文献】
Wan Y, Tobias DK, Dennis KK, et al. Association between changes in carbohydrate intake and long term weight changes: prospective cohort study. BMJ. 2023;382:e073939. doi:10.1136/bmj-2022-073939

 

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