元気になるオルソペディック ブログ
筋トレ前のコーヒーでパフォーマンスアップ!カフェインは筋トレ効果を高める科学的根拠を解説
【カフェインと筋力トレーニングの関係】
筋トレを行っている方の中には、トレーニング前にコーヒーやエナジードリンクを飲んで気合を入れるという方も多いのではないでしょうか。実は、こうした行動には科学的な裏付けがあることが、最新の研究で明らかになりました。
2025年に発表されたスペインの研究では、抵抗運動(ベンチプレスやスクワット)において、運動前にカフェインを摂取することで、筋力やパワー、持久力のパフォーマンスが向上することが示されました。特に注目すべきは、トレーニングを行う時間帯によるパフォーマンスの差が、カフェインによって打ち消されるという点です。
この研究には、筋力トレーニングの経験がある13人の男性が参加し、午前と午後にそれぞれカフェインまたはプラセボ(偽薬)を摂取してからトレーニングを行いました。カフェインは体重1kgあたり3mgという比較的低用量で与えられましたが、それでも明らかな効果が認められたのです。
【時間帯による筋力の違いとカフェインの効果】
人間の体には「サーカディアンリズム(概日リズム)」と呼ばれる生体リズムがあり、筋力や集中力などの身体的能力も1日の中で変動します。過去の研究では、一般的に午前中よりも午後の方が筋力やパワーが高くなる傾向があるとされています。
今回の研究でも、朝9時のトレーニングでは筋力やパワーの低下が見られましたが、カフェインを摂取することでその低下が抑えられ、午後6時のトレーニングと同等、あるいはそれ以上のパフォーマンスが引き出されることが分かりました。
具体的には、スクワットでは75〜90%の最大挙上重量(1RM)で実施した際、カフェインを摂取したグループで平均速度(Vmean)や平均パワー(Wmean)が向上し、持久力テストでも反復回数やパワーの指標が改善しました。
また、軽い負荷(25%1RM)でのベンチプレスやスクワットでも、午前中はパフォーマンスが落ちる傾向がありましたが、カフェインを摂取することでこの低下が見られなくなりました。これは、カフェインが特に午前中の「眠気」や「集中力低下」といった状態に効果的に働くことを示唆しています。
【筋活動には変化なし?パフォーマンス向上の理由とは】
パフォーマンスが向上したからといって、筋肉の活動そのものが増えたわけではありません。今回の研究では、筋肉の電気的活動(筋電図:EMG)も測定されましたが、カフェイン摂取によって有意な変化は見られませんでした。
つまり、筋肉の「動員数」や「電気的な興奮度」は変わっていないにもかかわらず、出力される力やパワーが増加していたのです。このことから、カフェインが筋肉内の「周辺的メカニズム」、すなわち筋肉細胞の中でのカルシウム放出やエネルギー供給の効率向上などによって効果を発揮している可能性が高いと考えられます。
また、筋力だけでなく筋持久力においても、65%1RMの中負荷での反復回数が増え、平均パワーも向上していました。これもカフェインによって筋肉の疲労耐性が高まった結果といえるでしょう。
これまで、カフェインが筋力や集中力を高める効果は知られていましたが、今回の研究では「時間帯の影響を打ち消す」効果や「筋活動を変えずに出力を上げる」点が明確になったことが大きな成果です。
トレーニングの成果を最大限に引き出すためには、トレーニングの時間帯や栄養摂取のタイミングも考慮することが重要です。朝にトレーニングする方や、午前中に試合やイベントがある方は、適量のカフェイン摂取を取り入れることで、パフォーマンスの低下を防ぐ効果が期待できます。
ただし、カフェインの摂取量や個人差にも注意が必要です。今回の研究では3mg/kgという低用量で効果がありましたが、これ以上の量を摂ると逆に副作用(不安感や睡眠障害など)が出る可能性もあります。
まとめると、筋トレ前のカフェイン摂取は科学的に効果が実証されており、特に朝のトレーニングで効果的であることが分かりました。安全な範囲で上手に活用すれば、より効率的なトレーニングが可能になるでしょう。
【参考論文】
Montalvo-Alonso JJ, del Val-Manzano M, Cerezo-Telléz E, et al. "Acute caffeine intake improves muscular strength, power, and endurance performance, reversing the time-of-day effect regardless of muscle activation level in resistance-trained males: a randomized controlled trial." European Journal of Applied Physiology. 2025. doi:10.1007/s00421-025-05820-3
免責事項
- 当ブログの内容はブログ管理者の私的な考えに基づく部分があります。医療行為に関しては自己責任で行って頂くようお願いいたします。
- 当ブログの情報を利用して行う一切の行為や、損失・トラブル等に対して、当ブログの管理者は何ら責任を負うものではありません。
- 当ブログの内容は、予告なしに内容を変更あるいは削除する場合がありますのであらかじめご了承ください。
- 当ブログの情報を利用する場合は、免責事項に同意したものと致します。
- 当ブログ内の画像等は、本人の承諾を得て、個人が特定されないように匿名化して利用させて頂いております。
当ブログでの個別の医療相談は受け付けておりません。