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膝の痛みを和らげる運動はどっち?ヨガvs筋トレの効果を比較した研究結果とは?
【変形性膝関節症の新常識】ヨガと筋トレ、どちらが効果的?
膝の痛みでお悩みの方にとって、「どんな運動が本当に効果的なのか」は非常に気になるところではないでしょうか。
最近の研究では、従来から推奨されている筋力トレーニングに加え、ヨガが注目されています。
本記事では、2025年に発表された最新の臨床試験をもとに、ヨガと筋トレの効果を比較しながらご紹介します。
【研究概要と主な結論】ヨガは「筋トレに劣らない」運動療法
この研究は、オーストラリアのタスマニアで実施されたランダム化比較試験です。
40歳以上で変形性膝関節症(以下、膝OA)と診断された117名の患者が対象でした。
被験者は2つのグループに分けられ、
- ヨガプログラム
- 筋力トレーニングプログラム
のいずれかに参加しました。
12週間の対面セッション(週3回)に続き、12週間の自宅トレーニングが行われ、
合計24週間にわたって経過が観察されました。
その結果、
- 12週間後の膝の痛み(VASスコア)において、ヨガは筋トレと「ほぼ同等」の効果を示しました。
- 24週間後には、ヨガの方が痛み、機能、こわばり、生活の質の改善でやや優れている傾向も見られました。
つまり、ヨガは筋トレに「劣らない」だけでなく、中期的には「やや優れる可能性」も示されたのです。
【効果の比較】痛み・機能・うつ状態・QOLの変化に注目
ここからは、より具体的に各評価項目の違いを見ていきましょう。
【痛みの改善:VASスコア】ヨガも筋トレも効果あり
VAS(Visual Analog Scale)は、0〜100mmのスケールで痛みを測定する指標です。
研究開始時の平均スコアは53.8mm(中等度の痛み)でした。
12週間後の変化:
- ヨガ:−17.7mm
- 筋トレ:−16.7mm
差はたったの−1.1mmで、有意差はありません。
ただし、両群ともに「臨床的に意味のある改善」が確認されました。
【機能・こわばりの改善:WOMACスコア】24週時点でヨガが優位
WOMACは、膝OAの評価に用いられる指標で、痛み・機能・こわばりの3項目があります。
24週間後の改善量(ヨガvs筋トレ):
- 痛み:−92.4mm vs −47.9mm
- 機能:−268.5mm vs −129.6mm
- こわばり:−40.3mm vs −22.6mm
全ての項目でヨガが有意に良い改善を示しました。
特に、日常生活で重要な「関節の動きやすさ」において、ヨガが高評価を得ています。
【精神面の変化:うつ症状と生活の質】ヨガが精神的にも効果的
うつ症状の評価にはPHQ-9(うつ病簡易評価尺度)が使われました。
12週間後、ヨガグループではスコアが有意に改善(−1.1ポイント)し、
筋トレグループとの差が見られました。
また、生活の質(QOL)を評価する「AQoL-8D」でも、24週後にはヨガの方が高得点となりました。
つまり、ヨガは心身両面において効果的であることが示されたのです。
【実際の運動内容】ヨガと筋トレのプログラム構成
気になるのは、実際のトレーニング内容ですよね。
ここでは、両者の特徴的な違いをご紹介します。
【ヨガプログラムの特徴】
- 柔軟性を高めるポーズ(例:キャットカウ、三角のポーズなど)
- 呼吸法(プラーナヤーマ)を重視
- マインドフルネス(瞑想要素)を含む
- 1回60分、週3回の構成(前半12週)
- 後半12週は自宅で週3回の継続実施
特に、ストレス軽減や集中力向上といった「心のトレーニング」も含まれるのがヨガの特徴です。
【筋力トレーニングの特徴】
- 太ももの筋肉(大腿四頭筋)を鍛えるスクワットなど
- 関節周囲の筋肉をターゲットにしたレジスタンストレーニング
- バランスと安定性の向上を目的としたトレーニングも実施
- 同様に週3回×12週間、後半は自宅トレーニングを継続
筋力低下は膝OAの大きな要因であり、筋トレは「関節の安定性向上」に非常に効果的です。
【安全性と継続率】ヨガは継続しやすく、副作用も軽度
運動を続けるうえで大切なのが「安全性」と「継続のしやすさ」です。
【副作用の発生率】
- ヨガ群:22名(37.9%)が何らかの副作用を報告
- 筋トレ群:16名(27.1%)
ただし、大半は軽度で、最も多かったのは「膝の痛みの一時的な悪化」でした。
ヨガに特有の副作用として「ポーズによるバランス崩れ」が挙げられました。
【継続率・自宅実施率】
- ヨガ群:12週以降の自宅運動継続率70.2%
- 筋トレ群:同60.0%
ヨガの方が継続されやすかった点も注目に値します。
これは「楽しさ」や「リラクゼーション効果」によるものと考えられます。
【まとめ】ヨガは膝の痛みに対する新しい選択肢
この研究は、変形性膝関節症の治療において、ヨガが「筋トレに匹敵する」有効性を持つことを示しました。
また、痛みや機能の改善に加えて、生活の質や精神面にも良い影響がある点が特徴的です。
これまで「筋トレはちょっとつらい」「続かない」と感じていた方にとって、
ヨガは新たな希望となるかもしれません。
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