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側弯症手術の最新技術をわかりやすく解説!VCA(コープレナーアライメント)法で背骨のゆがみを3次元矯正
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【VCAとは?背骨のゆがみを根本から整える新しい手術法】
「姿勢が悪い」と言われても、単なる生活習慣の問題だけでは済まされないケースがあります。それが「側弯症(そくわんしょう)」です。これは背骨が左右に曲がり、同時にねじれ(回旋)を伴う疾患で、進行すると外見だけでなく呼吸や消化など全身の機能にも影響を及ぼします。
このような側弯症に対し、従来の手術では十分にねじれの矯正ができない課題がありました。そんな中、注目されているのが「Vertebral CoPlanar Alignment(VCA)」という新しい手術手技です。
VCAは、背骨のねじれやズレを"同一平面上に整列させる"という独自のアプローチを採用しています。これは、X軸(前後方向)とZ軸(縦方向)を基準に、立体的に椎骨の配列を修正するもので、これまでにない3次元的な矯正効果が期待できます。
【VCAの仕組み:背骨を立体的に元の位置へ】
VCAの大きな特徴は、「コープレーナーチューブ」という器具を使って各椎骨に直接アクセスし、X軸とZ軸を同一の面に揃える点にあります。
まず、曲がった背骨の凸側(外側に出っ張った方)に金属製のチューブを取り付けます。このチューブは、背骨の回旋やズレを反映してバラバラの方向を向いています。
次に、1本目の「リダクションロッド」と呼ばれる棒をすべてのチューブに通して、仮の回転軸(Z軸)を形成します。その後、「スペーサー」と呼ばれるブロックをチューブの間に挿入し、背骨の自然なカーブ(後弯)を再現します。
さらに、2本目のリダクションロッドを1本目の下に挿入し、段階的に押し下げていくことで、チューブが徐々に揃い、各椎骨の軸が正しい方向に戻ります。つまり、背骨全体が3次元的にリセットされるのです。
この方法により、従来よりも正確に、そして安全に背骨のねじれや曲がりを矯正することができます。
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【VCAの効果と安全性:科学的根拠に基づいた成績】
VCAの技術は、2008年に発表された多施設共同研究で科学的に検証されました。この研究では、思春期特発性側弯症(AIS)Lenke type 1の患者25名を対象に、VCAによる手術成績を調査しました。
その結果、以下のような高い矯正効果が確認されています:
胸椎の側弯角(コブ角)**:術前平均61° → 術後平均16°(約73%の矯正)
胸椎の回旋角**:術前平均24° → 術後平均11°(約56%の矯正)
肋骨の出っ張り(リブハンプ)**:術前30mm → 術後11mm(約65%の改善)
後弯(背中の自然なカーブ)**:平均18° → 変化なし(自然な姿勢を維持)
特に注目すべき点は、矯正後の背骨の形がより自然に近づいた」ことです。これまでの手術では、ねじれの矯正を優先するあまり、背中の自然なカーブが失われることが課題でしたが、VCAではそれが防がれています。
また、研究中に手術中または術後の合併症は1例も報告されていません。これは、手技が正確に行われれば非常に安全性が高いことを示しています。
【まとめ:VCAが拓く側弯症治療の新時代】
VCA(Vertebral CoPlanar Alignment)は、背骨のねじれと曲がりを"平面"の概念でとらえ、3次元的に整える革新的な手術手技です。
その特長は:
* 精密な3D矯正が可能
* 背骨の自然なカーブを損なわない
* 合併症が少なく安全性が高い
* 医師の操作による誤差が少ない
成長期の子どもから若年者の側弯症にとって、将来のQOL(生活の質)を大きく左右する手術です。従来の矯正手術に不安を感じていた方にとっても、安心して選択できる治療法として今後ますます注目されることでしょう。
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【参考文献】
* Vallespir GP, Flores JB, Trigueros IS, et al. Vertebral coplanar alignment: a standardized technique for three dimensional correction in scoliosis surgery: technical description and preliminary results in Lenke type 1 curves. *Spine (Phila Pa 1976)*. 2008;33(14):1588-1597.
* Gabriel Piza Vallespir, Jesus Burgos Flores 他. Vertebral CoPlanar Alignment Surgical Technique 手技書.
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