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腰痛予防に!健康な人の背骨と骨盤の理想的なバランスとは?
【背骨と骨盤の理想的なバランスとは】
背骨や骨盤の正しい位置関係、つまり「アライメント」は、私たちが健康に過ごすうえでとても大切です。特に腰や背中の痛みがなくても、将来の姿勢トラブルや手術後の回復に影響を与える可能性があります。
今回紹介する研究は、世界27カ国・3万5,000人以上の健康な成人を対象に、背骨と骨盤の位置関係を詳しく調べた大規模な解析です。加齢や性別、人種によって姿勢にどんな違いがあるのか、医療現場でも注目されています。
この研究は、手術の目標設定やリハビリ、運動療法にも応用できる貴重なデータを提供しています。
【加齢とともに変化する背骨のカーブ】
Table 2(年齢別比較)
3つの年齢群(20-40歳、40-60歳、>60歳)間での各指標の比較。高齢者でPTやTKが増加、LL-S1やSSAが減少する傾向がある。
まず注目したいのが、年齢によって変化する背骨の「カーブ」です。特に胸椎後弯(きょうついこうわん)と呼ばれる背中の丸みや、骨盤の傾きは、60歳以上で顕著に増加していることが分かりました。
これは、筋力低下や骨の変形、関節のすり減りによる自然な変化と考えられています。実際、60代以上では骨盤の傾き(PT:Pelvic Tilt)が平均17.8度に達し、若い人に比べて明らかに高くなっています。
一方、腰のカーブ(腰椎前弯:LL)は年齢とともに減少傾向にあります。つまり、背中が丸くなり、腰の反りが少なくなることで、重心が前方にずれていくのです。
このような変化を防ぐには、若いうちから背筋や体幹を鍛える運動が効果的と言われています。
【性別や人種によって異なる骨盤の特徴】
Table 3(人種別比較)
アジア系、白人、ヒスパニック系、中東系の4群で比較。アジア系は他の群に比べTKとLLが小さい。
この研究では、女性は男性よりも骨盤傾斜(PT)や骨盤傾斜角(PI:Pelvic Incidence)が高い傾向があることも明らかになりました。PIとは、骨盤の形そのものを表す角度で、一生変わらない先天的な要素です。
特に日本人や中国人、韓国人などアジア人では、欧米人に比べてPIやLLが低く、背骨のS字カーブがやや少なめという傾向があります。この差は手術の際の目標設定や、運動療法の設計にも関係してきます。
Table 4(アジア内サブグループ)
中国・日本・韓国の比較。日本人はPI・SVAが高く、韓国人はLL-S1が大きく、アジア内でも顕著な差異がある。
また、同じアジア人でも中国人、韓国人、日本人の間で背骨のカーブや骨盤角度に違いが見られ、例えば中国人は腰椎前弯が少ない傾向にあるなど、興味深い結果が出ています。
【正しい姿勢を保つためのヒント】
この研究結果から得られる、私たちが日常生活で気をつけたいポイントをいくつか紹介します。
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背筋を伸ばすことを意識して、デスクワーク中も前かがみになりすぎない
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骨盤の傾きを整えるため、体幹を意識した運動を取り入れる(例:プランクやヨガ)
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年齢に応じた無理のないストレッチで、背中や腰の柔軟性を保つ
とくに40代以降は、知らず知らずのうちに背骨や骨盤のバランスが崩れてくるため、日頃からのケアが大切です。
【まとめ】
今回紹介した研究は、世界中の健康な人々のデータをもとに、「理想的な姿勢とは何か?」を明らかにした画期的な内容です。
- 年齢とともに背骨の丸みが増し、骨盤の傾きが変化する
- 女性は骨盤の傾きがやや大きく、姿勢の特徴にも差が出る
- アジア人と欧米人では背骨や骨盤の形に違いがある
これらを知ることで、正しい姿勢への意識が高まり、腰痛や加齢によるトラブルの予防にもつながるでしょう。
正しい知識をもとに、日常から「姿勢の質」を見直してみませんか?
【引用論文】
Dionne AC, Gorroochurn P, Miller R, et al. Normative Thoracic, Lumbar, Pelvic and Global Sagittal Alignment Parameters for Asymptomatic Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis of >35,900 Volunteers. Spine. 2025. DOI:10.1097/BRS.0000000000005274
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