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アルツハイマー予防に効く運動習慣とは?中年期に始めたい理由
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【中年期の運動が脳の健康を守るカギに?】
アルツハイマー病は、記憶力や思考力が徐々に低下する深刻な病気です。今や世界中で数千万人が悩んでおり、日本でも高齢化に伴って増加傾向にあります。
最近の研究では、発症の何十年も前から脳に変化が起きていることが分かってきました。そうした「前ぶれの時期」に、生活習慣の改善によって発症リスクを下げられる可能性があるのです。
今回ご紹介するスペインの研究では、中年期の運動習慣の変化が、将来のアルツハイマーに関わる脳の変化にどう影響するかが明らかになりました。
この研究では、45歳から65歳の健康な男女337人を4年間にわたって追跡。運動量の変化と脳の健康状態との関係を詳しく調べました。
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【運動と脳の変化:活動的な人ほど脳が健康】
研究では、運動量の変化に応じて参加者を5つのグループに分けました。
1. ずっと運動していない「座りがちグループ」
2. 推奨レベルに達しない運動を継続した「非達成グループ」
3. WHO(世界保健機関)の推奨レベルを維持した「継続達成グループ」
4. 推奨レベルから減ってしまった「運動減少グループ」
5. 運動を増やして推奨レベルを達成した「新規達成グループ」
その結果、ずっと運動をしていなかった人は、記憶に関わる「内側側頭葉(ないそくそくとうよう)」という脳の部分が薄くなっている傾向がありました。この部分はアルツハイマー病で最初にダメージを受ける場所です。
一方で、運動を増やした人たちは、脳の構造が比較的保たれており、特に「アミロイドβ」というアルツハイマー病の原因物質が少ないことが分かりました。運動量が多いほど、アミロイドβが減る傾向もあり、まさに「やればやるほど効果がある」状態でした。
【WHO推奨の運動量を達成するだけでも違いが!】
WHOは中年期以降の人に、次のような運動を週に行うことを推奨しています。
* 中強度(速歩きや軽いジョギングなど):150~300分
* 高強度(ランニングや筋トレなど):75~150分
* もしくはそれらの組み合わせ
今回の研究では、この基準に「新たに」達した人は、アミロイドβが大幅に少なかったのです。一方、もともと運動していたけれどやめてしまった人では、アミロイドβが多く見られました。
つまり「今からでも遅くない」。中年期に運動を始めるだけで、将来の認知症リスクを減らせるかもしれないのです。
また、運動を「しない」よりも「少しでもする」方が脳に良い影響があることも示されました。たとえWHOの推奨には届かなくても、少しずつでも身体を動かすことが、脳の老化を防ぐ可能性があるというわけです。
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【まとめ:今こそ運動を始めよう】
この研究からわかることは明確です。
* 中年期の運動習慣は、将来の脳の健康に大きな影響を与える
* WHO推奨レベルの運動を新たに始めることで、アルツハイマーの原因物質が減る
* 運動量が多いほど、より効果的である
* 少しでも運動をすることで、何もしないよりも脳が守られる
アルツハイマー病の発症を完全に防ぐ方法は、まだ見つかっていません。しかし、運動は副作用も少なく、心身にとって良いことづくめです。
毎日の生活の中に、ウォーキングや自転車、軽い体操などを取り入れてみてはいかがでしょうか?それが未来の自分の脳を守る第一歩になるかもしれません。
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引用論文
Akinci M, Aguilar-Domínguez P, Palpatzis E, et al. *Physical activity changes during midlife link to brain integrity and amyloid burden.* Alzheimer's Dement. 2025;21
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