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こむら返りと腰部脊柱管狭窄症の関係とは?手術後も続く原因と対策
【腰部脊柱管狭窄症とは?夜間のこむら返りとの深い関係】
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)は、高齢者に多く見られる腰の病気です。神経の通り道である「脊柱管(せきちゅうかん)」が加齢などで狭くなり、神経が圧迫されることで足の痛みやしびれ、歩きにくさなどが起こります。
ところが、この腰の病気に「こむら返り(足のつり)」が関係していることは、あまり知られていません。
今回紹介するのは、腰部脊柱管狭窄症「こむら返り(足のつり)」の関連について行った研究です。腰部脊柱管狭窄症の患者と、一般の高齢者との間で「夜間のこむら返り」がどれほど違うのか、また手術によって改善するのかを調査しました。
【調査で判明!腰部脊柱管狭窄症の人はこむら返りが約2倍多い】
研究では、腰部脊柱管狭窄症で手術を受けた120人と、健康な高齢者370人を対象にアンケートを実施しました。その結果、以下のことが明らかになりました。
- 狭窄症の患者のうち 70.8% がこむら返りを経験
- 健康な高齢者では 37.2%
- 頻度も高く、週に1~2回以上つる人が 34.9% もいた
また、こむら返りは主に**夜間(特に就寝中)**に起こっており、患者の73.3%が夜中につったと答えています。
足がつる場所は「ふくらはぎ(腓腹筋)」がもっとも多く、左右両方に起こるケースも目立ちました。
この結果から、腰部脊柱管狭窄症の患者は、健康な人と比べて約4.6倍もこむら返りを起こしやすいということが分かりました。
【手術で症状は改善する?残るしびれとこむら返りの関係】
腰部脊柱管狭窄症では、歩行障害や神経の圧迫を改善するために、手術(除圧術)を行うことがあります。
しかし、今回の研究では、手術を受けた患者のうち、
- こむら返りが 改善した人は18.2%
- 変わらない人が45.5%
- 悪化した人が26.1%
という結果になりました。
つまり、手術をしても半数以上の人でこむら返りが改善しなかったのです。
また、こむら返りを訴えた人の多くが、手術後も しびれや神経痛が残っていたという共通点がありました。特に、しびれがある人の80.2%にこむら返りが見られたのに対し、しびれがない人では51.3%にとどまりました。
このことから、神経へのダメージが回復しきっていないことが、こむら返りの原因になっている可能性が高いと考えられます。
【こむら返り対策と今後の治療法に向けて】
多くの患者が悩む「こむら返り」ですが、実際に何らかの治療を受けていた人は少数でした。
- 約半数(58人)は何の治療もしていない
- 薬物療法を受けていたのは9人(ビタミンBや筋弛緩薬など)
- マッサージや鍼灸を受けていた人も一部あり
また、こむら返りの原因となる可能性がある薬(利尿薬、降圧剤、スタチンなど)を服用しているかどうかと、こむら返りの頻度には統計的な関連性は見られませんでした。
このことから、腰部脊柱管狭窄症自体がこむら返りの主要な原因であると考えられます。
では、どうすればいいのでしょうか?
現時点で有効とされる方法には以下のようなものがあります:
- ふくらはぎのストレッチ(寝る前に行うと効果的)
- マッサージや温熱療法
- ビタミンやミネラルの補給(特にマグネシウムやビタミンB群)
- https://naruoseikei.com/blog/2024/12/vitamink2cramp.html
- 十分な水分補給と適度な運動
ただし、医学的に確実に効果があると証明された方法はまだ少なく、今後の研究が待たれています。
【まとめ:腰痛だけじゃない!「つる」症状もLCSの重要なサイン】
腰部脊柱管狭窄症といえば、「足がしびれる」「歩きにくい」といった症状がよく知られています。
しかし、この研究によって、「こむら返り(夜間の足のつり)」もまた、患者の生活の質を大きく下げる重要な症状のひとつであることが明らかになりました。
そして残念ながら、手術だけではこむら返りが完全に改善しないケースが多いことも分かっています。
腰部脊柱管狭窄症の患者さんやご家族、医療従事者の方々には、ぜひ「こむら返り」も見逃せない症状として捉え、日常生活の中での対策や治療を検討していただきたいと思います。
引用論文
Matsumoto M, Watanabe K, Tsuji T, et al. Nocturnal Leg Cramps: A Common Complaint in Patients With Lumbar Spinal Canal Stenosis. SPINE. 2009;34(5):E189-E194.
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