元気になるオルソペディック ブログ
椎体骨折の鑑別疾患には多発性骨髄腫が必須!
先日、鹿児島でweb講演をする機会を頂きました。
与えられた演題が「骨粗鬆症性椎体骨折の諸問題と薬物療法の重要性」とかなり大きな演題を話すことになりました。(汗)
その中で骨粗鬆症性椎体骨折の鑑別疾患について話したところ反響がありましたので、ブログで要点を述べたいと思います。
骨粗鬆症の診断は基本的には除外診断となりますので、骨がもろくなる疾患を除外して原発性骨粗鬆症の診断となります。
その中でも最も見逃してはいけない疾患は悪性疾患、特に多発性骨髄腫となります。
https://naruoseikei.com/blog/2022/03/2.html
多発性骨髄腫とは「骨髄」の中にある「形質細胞」と呼ばれる細胞が、がん化し、「骨髄腫細胞」となり増殖する病気です。正常な血液細胞をつくる造血機能が低下し貧血や腎機障害、高Ca血症、骨折、免疫機能の低下で感染症などさまざまな症状を呈します。(多発性骨髄腫の症状CRAB)50歳台から年齢とともに患者数が増えていきます。
整形外科には腰痛や骨折で受診することが多く、初診する科としては整形外科が約50%近くに上ります。50歳台の方が外傷なく椎体骨折を生じた場合にはまず疑わないといけません。
多発性骨髄腫の診断における整形外科医の役割 多田広志ら J.Spine Res.11:908-911,2020
当院でも2020年から2023年の間に3例の多発性骨髄腫の患者さんをスクリーニングしました。そのうち2例の方は痛みが強いため経皮的椎体形成術(BKP)を行って血液内科の病院へ転院し、化学療法の治療を行ってもらいました。腰痛などの痛みで離床できない状態だと(パフォーマンス・ステータスが低い)化学療法を適応できません。早期に治療を開始するためには骨折の痛みを改善する必要があります。低侵襲脊椎手術のBKPは除痛効果の即効性があり有用です。
突然の腰痛で骨折を指摘された場合は鑑別疾患として多発性骨髄腫がありますので、整形外科専門医を受診して精査してもらいましょう。
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