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腰椎固定術の進歩!NuVasiveの3Dプリントチタンケージ「Modulus」で癒合率97%達成

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【腰椎固定術におけるNuVasive社Modulusケージの可能性】

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腰椎疾患の治療で重要な役割を果たすのが「椎体間固定術(interbody fusion)」です。中でも「前方椎体間固定術(ALIF)」や「側方椎体間固定術(LLIF)」は、体への負担が少ない低侵襲手術として年々広がりを見せています。

こうした手術の成功には、インプラントと骨との「骨癒合(こつゆごう)」が不可欠です。これは、ケージと呼ばれるスペーサーの中や周囲に新しい骨が再生し、しっかりと融合する現象です。

本記事で紹介する研究では、NuVasive Inc.(米国)のModulusシリーズの3Dプリントチタンケージを用いてALIFおよびLLIFを行った結果、術後1年で骨癒合率97.1%という極めて高い成果が得られました。

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【Modulusケージの構造とチタン素材の強み】

Modulusシリーズは、NuVasive社が開発した3Dプリントによる多孔性チタン製ケージです。一般的なPEEK素材のケージとは異なり、表面に微細な凹凸や孔が設けられており、骨が入り込みやすい構造を持っています。

これにより、骨との「接着性」が飛躍的に向上し、より早期で確実な骨癒合が促されます。さらに、チタン自体は生体親和性に優れており、骨とのなじみが良いため、手術後の安定性にも寄与します。

Modulus ALIF(腰椎前方固定用)およびModulus XLIF(側方固定用)は、患者の骨格や病態に合わせたサイズ・形状が選べる点でも評価されています。

今回の研究では、100人の患者に137個のModulusケージを用いて手術が行われました。そのうち、97.1%が完全癒合(Grade I)、残りの2.9%も部分的癒合(Grade II)と判定され、偽関節(癒合不全)やケージの移動などによる再手術は1例も確認されていません。

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Table 3**:全体の癒合グレード。Grade I(97.1%)とGrade II(2.9%)を合わせた癒合率は100%。


【患者の回復とQOL改善への貢献】

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手術の成功は、画像上の癒合だけではなく、「どれだけ痛みや生活の質(QOL)が改善するか」も重要な指標です。本研究では、「ODI(Oswestry Disability Index)」という質問票を用いて、腰痛による日常生活への影響を評価しています。

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手術前のODI中央値は39点と、重度の障害が疑われる状態でした。しかし、術後1年では中央値10点にまで大幅に改善し、多くの患者が「痛みの軽減」や「動作のしやすさ」を実感しています。

また、術後半年から1年の間に症状の改善が安定し、それ以降は維持されていることから、Modulusケージによる手術は早期回復と持続的な効果をもたらすことが示唆されます。


【まとめと臨床応用への期待】

本研究から得られた知見は、以下のようにまとめられます。

  • NuVasive社製3Dプリントチタンケージ「Modulusシリーズ」は、ALIF・LLIFの癒合率を飛躍的に向上させる
  • 患者の生活の質が大きく改善し、合併症や再手術率も極めて低い

このような成果は、腰椎固定術の新たなスタンダードとしてModulusケージが今後さらに普及していく可能性を示しています。すでに世界中の整形外科・脊椎外科で採用が進んでおり、日本国内でも注目度が高まっています。

 


引用論文

Calek A-K, Hochreiter B, Buckland AJ. 3D-Printed Titanium Cages for Anterior and Lateral Lumbar Interbody Fusion Result in Excellent Fusion Rates One Year After Surgery. Global Spine Journal. 2025. DOI: 10.1177/21925682251344557

 

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