成尾整形外科病院

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慢性のしびれや痛みに悩む方へ|神経障害性疼痛の症状と治療を徹底解説

 

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【神経障害性疼痛とは?原因と症状のポイント解説】

神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)とは、神経が傷ついたり圧迫されたりすることで起こる痛みのことです。

たとえば、通常の捻挫や打撲のように、組織の損傷によって生じる「侵害受容性疼痛」とは原因も性質も異なります。

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神経障害性疼痛の原因には、次のようなものがあります。

  • 椎間板ヘルニア:背骨のクッションが飛び出し、神経を圧迫する
  • 腰部脊柱管狭窄症:神経の通り道が狭くなり、慢性的な圧迫を受ける
  • 手根管症候群:手首の神経が狭いトンネルで締め付けられ、指先にしびれや痛みが出る
  • 帯状疱疹後神経痛:ウイルスの後遺症で神経が傷つき、痛みが長く続く
  • 糖尿病性神経障害:高血糖によって神経が徐々に損傷される
  • 脳卒中や脊髄損傷後の痛み:中枢神経が障害されることで痛みが発生する
  • 三叉神経痛:顔面の神経に異常が起き、電撃のような痛みが出る

神経障害性疼痛の主な症状

  • 針で刺されるような鋭い痛み
  • 電気が走るようなビリビリとした痛み
  • 焼けるようなヒリヒリ感
  • 衣類や風が触れただけで痛む
  • 感覚が鈍くなる、逆に過敏になる

このような症状が、長期間にわたって続くのが特徴です。


【診断と検査の方法|スクリーニングと確定診断の流れ】

神経障害性疼痛の診断では、**「スクリーニング」→「神経学的診察」→「画像や神経の検査」**という3段階で進めます。

スクリーニング(ふるい分け)

まずは、患者さん自身の症状から神経障害性疼痛の可能性を見極めます。以下のような質問票(painDETECTや神経障害性疼痛スクリーニング質問票)**が使われます。

  • 「針で刺されたような痛みがある」
  • 「電気が走るような痛みがある」
  • 「冷たい風に触れるだけで痛む」
  • 「触られると痛い」

こうした質問の合計点が一定以上であれば、「神経障害性疼痛の可能性が高い」とされます。

神経学的診察

  • 神経が通っている範囲(デルマトーム)に一致したしびれや感覚の異常があるかを確認
  • 軽く触ったり、ピンで刺激したり、冷たいものを当てたりして、異常な反応(過敏・鈍さ・痛み)が出るかを調べます

画像・電気的検査

  • MRIやCTで神経の圧迫や損傷を確認
  • 神経伝導検査で神経の電気信号の伝わりやすさを評価

こうした問診・診察・検査の3つがそろったときに、神経障害性疼痛と確定診断されます。


【治療法の選び方|日本の最新ガイドラインに基づく薬物療法】神経障害性疼痛ガイドライン.jpg

日本神経障害性疼痛ガイドライン(2021年改訂)では、薬物療法が治療の基本とされています。薬は「第一選択薬」「第二選択薬」「第三選択薬」に分けられており、効果と副作用、使いやすさなどから段階的に使われます。

第一選択薬:効果と安全性のバランスが良い

◯ プレガバリン(商品名:リリカ)

  • 神経の過剰な興奮を抑える薬
  • 帯状疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、脊髄損傷後疼痛などに有効
  • 主な副作用:眠気、ふらつき、むくみ
  • 腎機能が悪い人は要注意

◯ デュロキセチン(商品名:サインバルタ)

  • 気分を安定させる抗うつ薬の一種だが、痛みにも有効
  • 糖尿病性神経障害、がん治療による痛み、坐骨神経痛に効果あり
  • 副作用:吐き気、眠気、口の渇きなど(軽度)

◯ 三環系抗うつ薬(TCA:アミトリプチリンなど)

  • 神経痛を抑えるメカニズムを持ち、痛みに効果的
  • 特にアミトリプチリンは広く使われるが、眠気や口渇に注意
  • 高齢者では低用量から慎重に使用

第二選択薬:限られた疾患に効果がある薬

◯ トラマドール(軽度のオピオイド)

  • 比較的安全な弱い麻薬性鎮痛薬
  • デュロキセチンと同様に、SNRI作用もあり
  • 糖尿病性神経障害、帯状疱疹後神経痛に有効
  • 長期使用には依存リスクに注意

◯ ノイロトロピン(ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液)

  • 自然免疫に働きかける独特な作用機序
  • 副作用が少なく、安全性が高い
  • 主に帯状疱疹後神経痛に適応

第三選択薬:麻薬性オピオイドなど専門医管理下で使用

  • モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなど
  • 効果は高いが、副作用や依存リスクがあるため、疼痛専門医の管理のもと使用

 

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【まとめ|自分に合った治療法を見つけるために】

神経障害性疼痛は、しびれや焼けるような痛みが長く続くつらい疾患です。しかし、最新のガイドラインに基づく治療により、痛みをコントロールし、日常生活の質(QOL)を改善できる可能性が高まっています。

大切なのは、以下の3点です。

  1. 正確な診断を受けて、痛みの原因が「神経由来」であるかを見極める
  2. 第一選択薬から慎重にスタートし、副作用と効果を見ながら調整する
  3. 難治性の場合は、神経刺激治療やオピオイド治療を専門医と相談しながら行う

「しびれが気になる」「痛みが続く」「薬が効かない」など、お悩みがあれば、早めに医師に相談することをおすすめします。


参考文献

  • 日本神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン作成委員会(2021)『神経障害性疼痛の薬物療法』
  • 日本神経障害性疼痛診断ガイドライン作成委員会(2021)『神経障害性疼痛の診断』
  • Soliman N, Moisset X, Ferraro MC, et al. Pharmacotherapy and non-invasive neuromodulation for neuropathic pain: a systematic review and meta-analysis. Lancet Neurol. 2025;24:413-28.

 

 

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