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変形性膝関節症に新たな希望!自家培養軟骨「ジャック」が治療の選択肢に
変形性膝関節症への新しい治療法:自家培養軟骨「ジャック」による再生医療の最前線
【再生医療「ジャック」とは何か?】
「ジャック」は、患者さん自身の軟骨組織を使って膝の軟骨を再生する医療製品です。
2012年に承認された「ジャック」は、日本で初めて整形外科分野において再生医療製品として登場しました。
その仕組みは、患者さんの健康な軟骨を採取し、アテロコラーゲンというゼリー状の物質と混ぜて立体的に培養することにあります。
この軟骨を、すり減った膝の部分に移植することで、軟骨の再生を促します。2013年からは保険適用となっており、重度の外傷性軟骨欠損症や離断性骨軟骨炎の患者さんに対して用いられてきました。
【変形性膝関節症への適応拡大の背景】
2024年6月、株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング(J-TEC)は、「ジャック」を変形性膝関節症にも使用できるよう、厚生労働省に適応拡大の承認申請を行いました。
これは大きな一歩です。
変形性膝関節症とは、膝の軟骨が徐々にすり減ることで痛みや腫れを引き起こす病気です。
中高年に多くみられ、日常生活に支障をきたす深刻な疾患です。
現在の治療法の中心は、抗炎症薬やヒアルロン酸注射などの「対症療法」ですが、症状の進行を止めることは難しく、最終的には人工関節置換術などの手術に頼らざるを得ません。
J-TECはこの治療の選択肢を広げるべく、2018年から変形性膝関節症に対する臨床試験を開始しました。
2024年2月には治験を終了し、以下のような結果が得られました。
- ヒアルロン酸ナトリウム製剤と比較して「ジャック」は統計的に有意な症状改善を示した
- 軟骨の欠損部には、滑らかで弾力性のある"硝子軟骨様"の組織による修復が確認された
このように、「ジャック」は変形性膝関節症にも効果的であることが科学的に示されたのです。
【今後の展望と再生医療の未来】
「ジャック」の変形性膝関節症への適応拡大が実現すれば、日本国内の多くの患者さんがその恩恵を受けることになります。
特に、これまで人工関節に頼らざるを得なかったケースでも、自己組織による再生治療という新しい選択肢が生まれることになります。
J-TECは、「再生医療をあたりまえの医療に」というビジョンを掲げ、整形外科だけでなく皮膚、眼科、口腔など複数の領域で再生医療製品を開発・製造している企業です。
すでに5つの再生医療製品を承認・販売しており、「ジャック」はその中核製品のひとつです。
今後の動きとしては、厚労省の承認取得、保険適用範囲の拡大、さらには手技の簡便化や患者さんへの負担軽減を見据えた改良など、継続的な進化が期待されます。
【まとめ】
変形性膝関節症は、これまで進行を止める有効な治療法が限られていました。
しかし、自家培養軟骨「ジャック」の登場により、患者さん自身の細胞で軟骨を再生し、痛みを軽減できる可能性が広がっています。
再生医療が「特別な治療」から「当たり前の治療」になる未来は、もうすぐそこに来ています。
今後の動向に注目が集まる中、私たち一人ひとりがこうした医療技術の進歩を正しく理解し、自分の体と向き合っていくことが大切です。
【引用】
- 株式会社ジャパン・ティッシュエンジニアリング「変形性膝関節症への適応拡大に向けて 自家培養軟骨『ジャック』の一部変更承認申請書を提出」(2024年6月17日)
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