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膝蓋腱炎(ジャンパー膝)は治る?アスリートの5年後の回復率と治療法を解説
膝蓋腱炎(ジャンパー膝)で悩むアスリートへ──5年後の回復率と治療のリアル
膝蓋腱炎、いわゆる「ジャンパー膝」は、バスケットボールやバレーボールなどジャンプを多用するスポーツでよく見られる慢性的な膝の痛みです。
「この痛み、いつまで続くの?」「また競技に戻れるの?」といった不安を抱えるアスリートは多いでしょう。
今回ご紹介するのは、そんな膝蓋腱炎を患ったアスリートたちが、理学療法を受けたあと、5年後にどうなったのかを追跡した貴重な研究結果です。
【回復率と痛みの変化:多くが改善、でも完全回復は一部】
この研究では、理学療法(運動療法・負荷調整・生活指導)を受けた76名のアスリートのうち、58名が5年後のフォローアップに参加しました。
その結果、約76%が「回復した」と自己評価しており、完全に回復したと感じている人は28%、かなり良くなったと感じている人が48%でした。
しかし、「少し良くなった」など回復を実感できなかった人も24%存在しており、その中には痛みや運動制限が持続しているケースもありました。
特に、スポーツ中の痛みスコアは平均7点(10点満点)から2点まで低下しており、多くの人で改善が見られましたが、完全に痛みが消えた人は全体の25%にとどまりました。
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【スポーツ復帰の現状:7割が復帰も、以前と同じパフォーマンスとは限らない】
競技復帰について見てみましょう。
71%のアスリートが元の競技に復帰できており、そのうち68%は以前と同じかそれ以上のパフォーマンスで活動していました。
一方で、21%は競技を変更したり、9%はスポーツを完全にやめていました。やめた理由としては、膝の痛みが再発する不安や、症状そのものが原因であるケースも含まれています。
また、競技頻度も5年後には約6割の人が減っていたという結果から、たとえ復帰できても、負荷を調整して活動している現状がうかがえます。
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【予後予測の難しさ:回復を左右する明確な要因は見つからず】
この研究では、「誰が回復しやすいか?」という予後因子(BMI、筋力、症状の長さなど)を調べましたが、明確な回復予測因子は見つかりませんでした。
つまり、年齢や体重、筋力などに関係なく、誰でも回復する可能性はある一方で、長引くケースもあるということです。
なお、自己評価で「回復した」と答えた人は、痛み・生活の質・スポーツ活動のすべてにおいてスコアが良好でした。
逆に、「回復していない」と感じた人は、**痛みのスコアが高く、生活の質や運動の頻度も低い傾向がありました。
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【まとめ:膝蓋腱炎は長期的には回復しやすいが、継続的なケアが重要】
この研究からわかるのは、膝蓋腱炎を患ったアスリートの約4人に3人が、理学療法を続けることで5年後には回復を実感しているということです。
ただし、完全に痛みが消えるわけではなく、一定の症状が残る人も多いのが現実です。
そのため、治療中は「痛みがゼロになること」よりも、「日常や競技に支障がないレベルまで回復すること」を目標にすることが大切です。
また、再発防止のためにも、スポーツ復帰後も筋力トレーニングやストレッチ、負荷調整など継続的なケアが必要です。
医師や理学療法士と連携しながら、焦らず地道にリハビリを続けていきましょう。
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【参考文献】
Deng J, et al. *Long-term Prognosis of Athletes With Patellar Tendinopathy Receiving Physical Therapy: Patient-Reported Outcomes at 5-Year Follow-up*. The American Journal of Sports Medicine. 2025; DOI: 10.1177/03635465251336466.
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