成尾整形外科病院

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スマートウォッチで運動習慣が変わる!糖尿病と筋骨格の健康を守る新常識

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糖尿病だけじゃない!

スマートウォッチで筋骨格も守る運動習慣とは?

「最近、運動しないな...」
「健康のために運動しなきゃ、とは思うけど...」
そう感じている方に朗報です。

英国とカナダで行われた研究で、スマートウォッチを使った運動支援が、糖尿病だけでなく筋肉や関節を含む"体全体"の健康にも効果が期待できることが示されました。

この記事では、【背景】【研究内容】【健康全体への効果】の3つの観点から、整形外科医の視点を交えつつ解説します。


「運動不足」は糖尿病も関節痛も悪化させる共通因子

糖尿病とロコモティブシンドローム(運動器症候群)、一見無関係のように見えますが、実は共通の原因があります。それが「運動不足」です。

運動不足が招く3つのリスク

  1. 血糖コントロールの悪化
     2型糖尿病では、筋肉を動かすことで血糖が消費され、血糖値が下がります。運動しないと、この作用が弱くなります。
  2. 筋力低下・関節機能の衰え
     年齢とともに筋肉は衰えやすくなり、運動しなければさらに加速。結果として「膝の痛み」「転倒」「腰痛」など、整形外科の受診理由になることが多い症状が出てきます。
  3. 慢性炎症の進行
     内臓脂肪や高血糖が引き起こす慢性の炎症は、糖尿病だけでなく変形性関節症や筋力低下にも関係します。

でも、運動は続かない...

  • やる気が続かない
  • 正しい運動方法がわからない
  • 一人だと不安になる

そんな方のために考えられたのが、スマートウォッチを使った「MOTIVATE-T2D」プログラムです。


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【スマートウォッチで支える「運動の見える化」と「続ける工夫」】

この研究は、英国とカナダの研究チームが実施したもので、対象は40〜75歳の2型糖尿病患者125人
6か月間、以下のような運動プログラムを実施しました。

2つのグループで比較

  1. スマートウォッチあり(MOTIVATE-T2D)グループ
     - 心拍数や動きをリアルタイムで計測
     - オンラインで運動専門家と個別カウンセリング
     - 毎週、励ましのメッセージやアドバイスあり
  2. スマートウォッチなしの対照グループ
     - 同様の運動プログラムだが、データの記録は手動
     - カウンセリングはあるが、リアルタイムの計測なし

運動の種類も多彩

  • ウォーキング、ジョギング、サイクリング
  • 自重トレーニングやストレッチ
  • 自宅や外出先でもOK

また、1週間で150分の中強度運動(例:少し息が上がるくらいの速歩き)を目標に設定しました。


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【健康全体への効果】糖尿病の改善に加えて「筋肉」「骨」「関節」も守れる

この取り組みで得られた成果は、糖尿病の管理だけにとどまりません。

1. 運動習慣の定着率が高い!

  • 運動を「開始」した人:スマートウォッチありグループは93%、なしは58%
  • 「6か月後」も運動を継続:あり→79%、なし→34%
  • 「12か月後」も続けた人:あり→30%、なし→13%

つまり、運動習慣の定着率が明らかに高いのです。

2. 筋肉・関節に与える良い影響

運動を継続することで、以下のような整形外科的なメリットも得られます:

  • サルコペニア(筋肉減少症)の予防
     → 特に高齢者に重要。歩行力や立ち上がり動作が向上します。
  • 膝や腰の慢性痛の改善
     → 適切な運動により、関節への負担を減らし、炎症や痛みが軽減されます。
  • 骨粗鬆症の予防
     → 負荷をかける運動(ウォーキングなど)は骨密度維持に役立ちます。
  • ロコモティブシンドロームの予防
     → 移動能力を維持するためにも、定期的な筋活動が必須です。

3. 自己効力感が向上し「健康への前向きな意識」が生まれる

参加者からはこんな声がありました:

「スマートウォッチがあることで"ちゃんとやれてる"って安心できた」
「専門家からメッセージが来るのが励みになった」
「最初は運動が怖かったけど、続けていくうちに楽しくなった」

これは、自分自身の体の変化を「見える化」し、自信を持てるからこその反応です。


まとめ:運動は糖尿病だけでなく「整形外科的健康」も守る最大の武器

今回の研究から見えてきたのは、スマートウォッチと個別サポートの組み合わせが、
「運動を始める」「続ける」「体に良い変化を実感する」ために極めて有効だということです。

糖尿病のコントロールはもちろん、筋肉や関節の健康、さらには自立した生活を続けるための運動習慣づくりにも直結します。

これからの健康管理において、スマートウォッチはただのガジェットではなく、
"人生を変える医療デバイス"になるかもしれません。


引用論文

Hesketh K, et al. Mobile Health Biometrics to Enhance Exercise and Physical Activity Adherence in Type 2 Diabetes (MOTIVATE-T2D): a decentralised feasibility randomised controlled trial delivered across the UK and Canada. BMJ Open. 2025;15:e092260. doi:10.1136/bmjopen-2024-092260

 

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