成尾整形外科病院

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腰椎手術後のリハビリは早く動くべき?最新研究でわかった驚きの効果

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【手術後のリハビリ比較】「安静」よりも「動く」方が早く回復する理由

腰の手術を受けた後、どのようなリハビリを行うかで、その後の回復に大きな差が出ることが、アメリカの研究で明らかになりました。

この記事では、「腰椎後方除圧固定術」という腰の手術を受けた患者さんに対して、歩行制限のある病院と、自由に歩けるように促す病院で行われたリハビリの効果を比較した結果をご紹介します。


【早期離床の効果】早く動いた患者の方が入院が短く合併症も少なかった

この研究では、アメリカの2つの病院で腰椎手術を受けた220人の患者さんを対象に、手術後の歩行に関する方針の違いによる影響を調べました。入院歩行つきそい.png

  • 一方の病院では、「ベッドから出るときは必ずナースを呼ぶ」「ベッドにセンサーをつける」など、歩行制限が厳しい方針。入院中歩行自立.png
  • もう一方の病院では、「必要に応じて介助はするが、基本的には自分で動くことを促す」自由な歩行方針が採用されていました。

結果は以下の通りです。

  • 自由に歩けた病院の患者さんは、入院日数が平均で約2.7日も短縮(1.35日 vs 4.02日)
  • 1年以内の再手術率も大きく低下(0.9% vs 9.1%)
  • 合併症の発生率も低下(6.4% vs 20.0%)
  • 退院後、自宅に戻れた割合が高い(94.5% vs 84.5%)

これらの差は統計的にも有意で、早期に歩行を促すことで、手術後の回復が加速されることが証明されました


【歩行距離と回復の関係】初回リハビリの歩数が予後を左右する!

患者さんが手術後最初に受けるリハビリでは、「AM-PACスコア」と呼ばれる基本的な動作能力の評価と、「歩行距離(ステップ数)」が記録されました。

  • 自由歩行グループの平均歩数は130歩
  • 歩行制限グループは約69歩
  • さらに、AM-PACスコアも5ポイント以上の差がありました

研究者たちは、「歩行距離が長いほど、合併症のリスクが低く、入院も短く、自宅退院しやすい」という相関関係を導き出しています。

つまり、「どれだけ早く、どれだけ歩けるか」が、手術の成功とその後の生活の質を大きく左右するのです。


【安全性は?】早期歩行でも転倒リスクは増えなかった!

「歩いた方がいいのはわかるけど、転倒が心配...」という声もあるでしょう。

しかし、この研究で注目すべき点は、どちらの病院でも手術後の入院中に転倒は1件もなかったことです。

退院後に起きた転倒も、ごく少数で、制限付きの病院で2件、自由歩行の病院で1件と、特に差は見られませんでした。

つまり、適切なリスク管理を行えば、早期歩行は決して危険なものではなく、むしろ安全かつ効果的な回復手段だといえます。


入院中歩行介助.png

【まとめ】腰椎手術後は、できるだけ早く歩き始めるのが正解!

今回ご紹介した研究では、「早期歩行」が腰椎手術後の回復にとって非常に効果的であることが示されました。

  • 入院期間が短くなる
  • 合併症のリスクが減る
  • 自宅退院できる確率が高くなる
  • しかも痛みは増えない

もちろん、すべての患者さんに一律に同じアプローチが適用できるわけではありませんが、医療スタッフがサポートしたうえで、できるだけ早く立って歩くことが重要です。

ご自身やご家族が腰の手術を受ける予定がある場合、「術後のリハビリはどんな方針ですか?」と医師や病院に確認してみることをおすすめします


【参考文献】

Narayanan R, Kellish A, Ezeonu T, et al. Comparison of Restricted versus Liberal Post-Surgical Ambulation Protocols on Outcomes after Lumbar Fusion Surgery. Spine. Published ahead of print. DOI:10.1097/BRS.0000000000005118

 

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