【1】減量の医学的な効果：膝関節への負担軽減

変形性膝関節症（膝OA）は、高齢者の膝の痛みや歩行困難の主な原因です。その最も重要な危険因子の一つが「肥満」です。

アメリカで行われた研究では、18か月にわたり過体重または肥満の高齢者142人を対象に、食事や運動による減量と膝への負担との関係を調査しました。

その結果、「体重を1kg減らすごとに膝への負担が約4倍減少する」という驚くべき事実が判明しました。つまり、1kgの減量で膝への衝撃が約40Nも軽減されるのです。

さらに、平均5％の体重減少で、日常生活での機能が18％も改善されたとのこと。運動も組み合わせることで、この改善は最大24％にまで向上しました。これは、階段の上り下りや散歩など、日々の動作がよりスムーズになるということを意味します。

【2】リバウンド防止のカギ：認知行動療法（CBT）

ダイエットに成功しても、多くの人が悩むのが「リバウンド」です。しかし、認知行動療法（CBT）がこの問題の突破口になりうると、ある研究が示しています。

この研究では、10％以上の減量に成功した女性113人を対象に、CBTを取り入れたグループとそうでないグループで、24週間の体重維持効果を比較しました。

その結果、CBTを受けたグループは平均2.2kgの追加減量に成功し、ウエストサイズも平均2cm以上減少。日々の歩数も多く、食事量も自然と少なくなったのです。

CBTとは、思考や行動のクセを見直し、リバウンドしやすい思考パターン（例：「少し食べたらもういいや」）をポジティブに修正する心理的アプローチです。運動や食事の指導と併用することで、ダイエットの成果を長続きさせる強力なツールになるのです。

【3】持続可能な減量と骨の健康：地中海式ダイエットと運動の組み合わせ

中高年になると、「ダイエットで骨が弱くなるのでは？」という不安の声もあります。実際、過度な減量は骨密度の低下を引き起こすリスクがあります。

しかし、3年間にわたるスペインの臨床研究（PREDIMED-Plus）では、地中海式の食事（野菜・魚・オリーブオイル中心）と定期的な運動を組み合わせたグループで、特に女性において骨密度の改善が確認されました。

これは、ただ体重を減らすのではなく、体に必要な栄養素をしっかり取りつつ、筋肉と骨を維持する運動習慣を同時に取り入れることが重要だということを示しています。

特に女性では腰椎（腰の骨）の骨密度が3年で有意に改善し、骨粗しょう症や骨折のリスクが軽減される可能性が示されました。

まとめ

膝の痛みや変形性膝関節症を改善するには、「少しの減量」が実は非常に大きな効果をもたらします。さらに、その成果を維持し、骨の健康を守るには、次の3つのポイントが重要です。

1. たった5％の減量でも、膝への負担は大きく軽減され、歩行もラクに！
2. 認知行動療法（CBT）を取り入れることで、ダイエットのリバウンドを防ぎやすくなる。
3. 地中海式のバランス食＋運動習慣は、減量しつつ骨の健康も守る最善策。

ダイエットは「見た目のため」だけでなく、「関節や骨の健康を守る治療」の一環です。無理なく、続けられる方法を選びましょう。

引用論文

1. Messier SP, et al. Weight loss reduces knee-joint loads in overweight and obese older adults with knee osteoarthritis. Arthritis Rheum. 2005;52(7):2026-2032. DOI:10.1002/art.21139
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