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時間制限ダイエットは本当に効果ある?最新研究で明らかになった真実

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【なぜ「時間制限ダイエット」が注目されるのか】

肥満は世界中で深刻な健康問題となっています。生活習慣の見直しが重要である中、食事管理はダイエットの柱として位置づけられています。

特に「カロリー制限」は昔から知られる方法であり、1日の摂取カロリーを抑えることで体重を減らすことが期待できます。しかしこの方法は、長期間の継続が難しく、体重の再増加に悩む人も少なくありません。

そこで注目を集めているのが「時間制限ダイエット(Time-Restricted Eating:TRE)」です。これは1日のうちで食事をする時間を8時間以内などに制限し、残りの16時間は食事をとらないという方法です。

「簡単で続けやすい」「空腹感が減る」などといった口コミが広がり、テレビやSNSでも話題になっていますが、本当に効果があるのか、長期的に安全なのかについてはこれまで科学的な裏付けが不十分でした。


食事時間制限ありダイエット.png

【研究の概要:1年間の比較試験で見えた現実】

この研究は中国・広州の病院を中心に行われ、18〜75歳の肥満のある男女139人が対象となりました。

参加者は2つのグループにランダムに分けられました。

  • 時間制限ダイエットグループ(TRE群)
     毎日午前8時〜午後4時の8時間以内に食事を済ませる。
     男性は1500〜1800kcal、女性は1200〜1500kcalに制限。
  • カロリー制限のみのグループ(CR群)
     食事時間の制限はなし。ただし同じくカロリーは制限。

両グループともに、食事内容のアドバイスや栄養指導、アプリを使った食事記録など、手厚いサポートが受けられる体制が整っていました。

結果として、12ヶ月後の体重の平均減少は以下の通りです。

  • TRE群:8.0kg減少
  • CR群:6.3kg減少

一見すると時間制限ダイエットの方が減量効果があるように見えますが、統計的には「有意差なし」と判断されました。つまり、時間制限があってもなくても、減量効果に大きな差はなかったのです。

また、ウエストのサイズ、体脂肪、内臓脂肪、血糖値、血圧、血中脂質などの健康指標にも、両グループ間で明確な違いは見られませんでした。


【時間制限ダイエットの実力と今後の課題】

この研究からわかることは、「時間制限ダイエットは確かに効果的だが、それはカロリー制限を併用した場合に限る」という点です。

つまり、好きなだけ食べていては時間を制限しても体重は落ちない可能性が高い、ということです。

また、今回の試験では、どちらのグループも平均で1日に500kcal程度カロリーを減らしており、カロリーの制限こそが減量の決め手であったともいえます。

さらに、参加者の平均年齢は32歳程度と若く、持病のない人が多かったため、糖尿病や心臓病のある人にもこの結果がそのまま当てはまるかはわかっていません。

では時間制限ダイエットは意味がないのか?
決してそうではありません。以下のような点で、有効な戦略となりうるのです。

時間制限で間食減少.png

  • 食べる時間を決めることで間食や夜食が減りやすい
  • 空腹時間を作ることで、食べすぎを防ぎやすくなる
  • 日常生活のリズムが整いやすくなる

また、食事内容をコントロールするのが苦手な人でも、「まず時間を意識する」というシンプルな方法から始められることが、継続のカギとなるかもしれません。


食事時間制限とカロリー制限.png

【まとめ:時間より大切なのは「カロリー」と「継続」】

この研究は、ダイエットにおいて「食べる時間」よりも「摂取カロリーのコントロール」が重要であることを示しました。

つまり、時間制限ダイエットをしていても、カロリーが過剰であれば効果は限定的です。一方で、きちんとカロリーを管理できれば、時間制限がなくても減量は可能というわけです。

重要なのは、自分に合った方法で無理なく継続できるかどうか。時間制限が合う人もいれば、3食きちんと食べたい人もいます。まずは試してみて、自分のライフスタイルに合うかどうかを見極めるのがよいでしょう。


【参考文献】

Liu D, Huang Y, Huang C, et al. Calorie Restriction with or without Time-Restricted Eating in Weight Loss. N Engl J Med. 2022;386(16):1495-1504. DOI: 10.1056/NEJMoa2114833.

 

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