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保存療法 vs 手術、どっちが効果的?頚椎症性神経根症の最新治療ガイド
【頚椎症性神経根症とは?症状と原因をわかりやすく解説】
頚椎(けいつい)とは、首を構成する背骨の一部で、7つの骨から成り立っています。加齢や日常生活の影響で、この部分に変化が起こり、神経が圧迫されると「頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)」という状態になります。
この病気は、首から肩、腕にかけての痛みやしびれを引き起こし、時に筋力低下や運動障害を伴います。特に40代後半から60代に多く、高齢化やデスクワークの増加が影響しています。
主な原因は、椎間板(ついかんばん)の変性や骨のとげ(骨棘)、靭帯のゆるみや肥厚によって神経が圧迫されることです。症状は突然現れることもあれば、少しずつ進行することもあります。
【保存療法と手術療法、どちらが効果的?】
今回紹介する論文では、保存療法と手術療法の効果を比較した6つの臨床研究をもとに、合計464人の患者データを分析しています。ここでは、痛みの程度(VASスコア)や日常生活の障害度(NDIスコア)、首の動きの範囲(可動域)、メンタルヘルスなどが評価されました。
保存療法とは?
保存療法には、以下のような手術を行わない治療が含まれます:
理学療法(運動療法)
*電気刺激療法(TENS)
*首のけん引(牽引)
鎮痛薬や非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、神経障害性疼痛治療薬
頚椎カラーの使用
姿勢指導やストレス対処の教育
週に1~2回、3か月以上続けることで、多くの患者で長期的な改善効果が期待できます。
手術療法とは?
手術には以下のような方法があります:
前方除圧固定術(ACDF):最も一般的で、首の前側からアプローチします。
後方手術(椎弓形成術、椎間孔拡大術など):主に後方から神経の圧迫を除きます。
論文では、手術療法は保存療法に比べて痛みの改善効果が早く、1年以内で特に優れていることが示されました。
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【それぞれの治療のメリット・デメリットと選び方】
手術療法のメリット
首や腕の痛みを早く軽減できる
NDI(生活障害指標)も短期間では改善
若年者や早く仕事復帰を希望する人に適する
手術療法のデメリット
合併症のリスク(嚥下障害、声帯麻痺、傷の感染など)
長期的な効果には慎重な評価が必要
再発や隣接部位の変性が将来的に起こることも
保存療法のメリット
身体への負担が少なく安全性が高い
自然経過でも改善が期待できる(83%の患者が2~3年で症状改善)
長期間通院可能な方や手術に抵抗がある方に適する
保存療法のデメリット
効果が現れるまでに時間がかかる
痛みが強い場合は不十分なことも
治療内容や頻度によって効果に差がある
どちらを選ぶべき?
論文では、「痛みが強く日常生活に支障がある場合は手術**を検討すべき」とされています。一方、痛みが軽度であれば保存療法から始めるのが妥当です。
特に次のような場合は手術の適応が高くなります:
保存療法を3か月以上続けても改善がない
筋力低下や麻痺がみられる
早期復職や強い痛みで日常生活に支障が大きい
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【まとめ:自分に合った治療法を選ぶために】
頚椎症性神経根症の治療選択は、症状の強さや生活スタイル、本人の希望によって大きく異なります。本論文から得られたポイントは以下の通りです:
手術は1年以内では保存療法より効果が高いが、長期的には差が小さくなることも。
保存療法も継続すれば改善が見込める安全な選択肢。
痛みが強い場合は、早期の手術が有効である可能性が高い。
手術の合併症や再発リスクも踏まえ、信頼できる医師と相談して治療方針を決めることが大切です。
頚椎の病気は適切な知識と治療によって改善が期待できるものです。首や腕の痛みに悩む方は、まずは専門医を受診して、現在の症状に最適な治療法を見つけましょう。
引用論文
Luyao Huo, Xiaoxiao Yang, Tianxiao Feng, Yuandong Li, Ping Wang.
*Management of Cervical Spondylotic Radiculopathy: A Systematic Review.*
Global Spine Journal. 2022; 12(8):1912-1924. doi:10.1177/21925682221075290
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