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バレエで足を痛めないために!外反母趾とターンアウトの意外な関係
【外反母趾はなぜ起きる?バレエと足の関節の関係】
バレエダンサーの多くが悩まされる足のトラブル。その代表格が「外反母趾」です。
外反母趾とは、足の親指が外側に曲がり、関節部分が出っ張ってしまう状態を指します。重症化すると歩行に支障をきたすこともあります。
この変形には、遺伝や靴の影響、加齢など様々な原因がありますが、バレエとの関係も注目されています。
特に、足先を外に向ける「ターンアウト」という基本姿勢に無理があると、「第一足根中足関節(足の甲の関節)」に大きな負担がかかり、外反母趾のリスクが高まることがわかってきました。
【無理なターンアウトが足の関節に与える影響とは】
広島大学の研究チームは、バレエ歴7年以上の女性ダンサー17名を対象に、足の関節の動きを超音波と3次元動作解析を使って詳しく調べました。
被験者は以下の3つの姿勢で、基本動作である「デミ・プリエ(膝を曲げてしゃがむ動作)」を行いました。
- コントロール:まっすぐに立った姿勢
- 機能的ターンアウト:無理のない範囲での開脚姿勢
- 強制的ターンアウト:通常のレッスンで多く使われる最大限の開脚姿勢
足の甲にある「第一中足骨(親指の骨)」と「内側楔状骨(足の中心部の骨)」の垂直方向の位置を測定し、その差を「関節のゆるみ」として評価しました。
その結果、「強制的ターンアウト」での骨の動きが最も大きく、特に足底側へのズレが顕著でした。これは、足のアーチがつぶれるような負担がかかっていることを意味します。
【外反母趾を防ぐためにできること】
研究によると、無理にターンアウトを行うことで、足の関節に余計な動きが生じ、長年の繰り返しによって外反母趾のリスクが高まる可能性があると考えられます。
特に、股関節の外旋(外向きに回す動き)が十分でないダンサーは、足首や足のねじれで補おうとし、その結果として足の甲の関節がゆるみ、足のアーチが崩れやすくなります。
研究者たちは、「自分の体の可動域に合った"機能的ターンアウト"を習得すること」が重要であると述べています。
また、デミ・プリエはジャンプやつま先立ちなど、ほとんどの技術の土台となる基本動作です。この姿勢での関節の動きは、バレエ全体のフォームや安全性にも関わってくるため、正しいフォームを意識することが大切です。
【まとめ:足を守るための正しいターンアウトを身につけよう】
今回の研究から、日々のターンアウトの姿勢や動作が、将来的な外反母趾のリスクと関係している可能性が明らかになりました。
特に注目すべきなのは、強制的なターンアウトを続けることで「第一足根中足関節」がゆるみやすくなることです。これは、足の安定性を損ない、アーチの崩れ、さらには痛みを引き起こす要因にもなりえます。
そのため、無理な開脚ではなく、自分の体に合った適切な可動域を理解し、安全なフォームを身につけることが、ケガの予防と長く踊り続けるための鍵となります。
今後は、ジャンプやつま先立ちなど、さらに動きの大きな技術における関節の動きについても研究が進められることが期待されます。
【引用文献】
Ishihara H, Maeda N, Komiya M, 他. The vertical mobility of the first tarsometatarsal joint during demi‑plié with forced turnout in ballet dancers. Scientific Reports. 2024;14:15321. https://doi.org/10.1038/s41598-024-64304-0
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