成尾整形外科病院

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頚椎症性神経根症の痛みに効く?ミロガバリン+NSAIDsの新たな可能性を解説

 

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【ミロガバリンって何?首の痛みやしびれに新たな治療法】

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首の加齢による変化が原因で、腕にかけて痛みやしびれが出る病気を「頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)」といいます。
この病気では、最初の治療としては手術ではなく、お薬による保存的な治療が選ばれることが多いです。

しかし、通常使われる消炎鎮痛薬(NSAIDs)だけでは、なかなか痛みが和らがない方もいます。
そこで今回注目されたのが「ミロガバリン」というお薬です。

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ミロガバリンは、神経の痛みを和らげる作用を持つ新しいタイプの薬で、糖尿病性神経痛や帯状疱疹後神経痛などにも使われている実績があります。

さらに重要なのは、「神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)」と呼ばれるこの種の痛みが、単なる不快感にとどまらず、日常生活の質(QOL)を著しく低下させることです。
たとえば、痛みのせいで仕事に集中できない、家事ができない、夜眠れないといった問題が生じ、精神的にも大きなストレスを抱えることがあります。

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このような背景から、NePに対して効果的な治療法を見つけることは、痛みを抑えるだけでなく、患者さんの生活全体を改善するという意味でも非常に重要です。

今回の研究では、このミロガバリンをNSAIDsに追加して使うことで、より高い痛みの軽減効果が得られるかどうかが調べられました。

 

 

 【研究結果のポイント:痛みの軽減と生活の質の改善】

 

この研究「Miro-Cens」は、日本国内の複数施設で実施されたランダム化比較試験で、信頼性の高いデータが得られています。

 

● 主な成果

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Figure 3a・b(Primary Outcome & Responder Rate)
3aはNRSスコアの週平均変化を示し、併用群が一貫して改善。3bでは50%以上改善した患者が併用群58.3% vs 単独群22.6%と有意差。

痛みの軽減が大きい!

  12週間後の痛みの評価(NRSスコア)は、NSAIDsだけのグループでは平均で−1.07の改善でしたが、ミロガバリンを加えたグループでは−2.63と大きく改善していました。

 

改善率の差が明確!

  痛みが30%以上軽減した人の割合は、ミロガバリン併用で71.7%、NSAIDs単独で39.6%。

  さらに50%以上改善した人も、ミロガバリン群では58.3%と高率でした。

 

日常生活の質も向上

  痛みだけでなく、睡眠の質や生活の質(QOL)にも良い影響が見られました。特に「患者自身の感じる改善度(PGIC)」では、90%以上の方が「少なくとも少し改善した」と感じていました。

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Figure 5(PGICスコア)
患者主観による改善評価で、併用群の満足度は高く、「非常に改善」または「かなり改善」と答えた割合が顕著に多い。

 

【副作用と安全性:注意すべきポイントは?】

 

ミロガバリンを使ったグループでは、副作用が出た人の割合が約49%とやや多めでした。

主な症状は「眠気(23.6%)」「ふらつき(13.9%)」で、ほとんどが軽度〜中等度のものでした。

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注意点としては車の運転や高所作業など、注意力が必要な作業を行う場合に内服を控える必要があります。

 

とはいえ、重篤な副作用はほとんどなく、安全性に関して新たな懸念は報告されていません。

NSAIDs単独よりも副作用が出やすいのは確かですが、治療効果とのバランスを見て判断する価値があります。

 

 

【まとめ:ミロガバリンの追加は有効な選択肢】

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頚椎症性神経根症の治療において、NSAIDsのみで不十分な場合、ミロガバリンの追加投与は有効かつ安全な選択肢になり得ることが今回の研究で示されました。

 

痛みの軽減だけでなく、日常生活の質の向上、そして全体的な患者満足度の向上も確認されており、今後の治療ガイドラインにも影響を与える可能性があります。

 

ただし、副作用には注意が必要なため、専門医とよく相談した上で治療方針を決定することが大切です。

 

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【引用文献】

Hirai T, Okawa A, Takahashi H, et al. *Efficacy and Safety of Mirogabalin in Patients with Neuropathic Pain Due to Cervical Spondylotic Radiculopathy: Miro-Cens, A Randomized, Controlled, Interventional Study.* Pain Ther. 2025;14:1063-1079. [https://doi.org/10.1007/s40122-025-00722-w](https://doi.org/10.1007/s40122-025-00722-w)

 

 

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