成尾整形外科病院

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骨粗鬆症でも安心!CBT法をMySpine MCで行う低侵襲腰椎固定術の効果とは?

 

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 腰椎手術で注目の「CBT法」とは?その効果と安全性をわかりやすく解説!

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腰痛や足のしびれなどを引き起こす、腰椎すべり症など不安定性を有する腰椎疾患は薬やリハビリでも改善しない場合、「腰椎固定術」と呼ばれる手術が行われます。

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図;ペディクルスクリュー法

近年、従来の「ペディクルスクリュー法」に代わる新たな方法として、「コルチカルボーントラジェクトリースクリュー(CBT)法」が注目されています。

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この記事では、CBT法と従来法を比較した最新の医学論文をもとに、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説します。

 

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【CBT法とは?その仕組みと特徴】

 

CBT法とは、「皮質骨(コルチカルボーン)」と呼ばれる硬くて密度の高い骨にネジを打ち込む新しいスクリュー固定術です。

 

従来の方法では「海綿骨(スポンジ状の骨)」にネジを通していたため、高齢者や骨粗鬆症の患者さんではネジが緩みやすいという課題がありました。

 

CBT法では、より硬い骨にネジを固定することで、以下のような効果が期待できます。

 

しっかりとした固定力(骨が弱くても外れにくい)

手術の傷が小さくなる(体への負担が少ない)

出血や手術時間が少ない

 

さらに、近年では「MySpine MC」という、患者ごとにカスタム設計された3次元(3D)プリントガイドを活用する技術が登場しています。

 MyspineMCプラン.jpeg

このシステムでは、患者さんのCT画像をもとに精密な3Dモデルを作成し、最適なネジの角度や長さを事前にシミュレーション。それに基づいてプリントされた専用ガイドを手術中に使用することで、CBTスクリューの正確な挿入が可能になります。

 myspineMC模型.jpg

この方法により、神経損傷のリスクも低減され、放射線被ばく量の削減にもつながります。手術後の成績も良好で、**術後のネジ位置の誤差は1mm未満**という非常に高い精度が報告されています。

 

 

【CBTと従来法の効果を徹底比較:手術成績・安全性・痛み】

 

最新の研究では、CBT法と従来法(ペディクルスクリュー法)を直接比較したランダム化比較試験(RCT)が3件行われ、その結果を統合したメタ解析が発表されました。

 

この研究では、合計416名の患者を対象に、1~2年にわたって手術の効果や安全性が比較されています。

 

結果①:骨がきちんとくっつく「癒合率」は同等

 

手術後に骨がしっかりとくっついたかどうか(癒合率)は、CBT法も従来法もほぼ同じでした。

 

* 1年後の癒合率:CBT 89%、従来法 85%

* 2年後の癒合率:ほぼ同等

 

つまり、CBT法でも従来法と同じくらいしっかり骨がくっつくと考えられます。

 

結果②:術中の合併症はCBT法が優位

 

手術中の合併症(ネジの位置ズレや神経への影響など)は、CBT法のほうが少ないことがわかりました。

 

特に、「椎間関節(関節部分)」を傷つけてしまうリスクが、従来法よりも約6割も低いという結果が出ています。

 

これは、CBT法のネジが内側から外側に向かって打ち込まれるため、関節を避けやすい構造になっているからです。

 

結果③:術後の合併症や痛み、生活の質に差はなし

 

手術後の感染、再手術、ネジの緩み、さらなる腰痛(隣接椎間障害など)は、どちらの方法でも大きな違いはありませんでした。

 

また、患者さんが感じる「痛み」や「日常生活での不便さ」も、2年後にはほぼ同じレベルに回復していました。

 

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【CBT法のメリットと限界:実際の選択はどうすれば?】

 

CBT法は、短い手術時間、少ない出血、小さな切開など、多くのメリットがある一方で、現時点では以下のような注意点もあります。

 

メリット

 

術中合併症が少な

手術時間が短い

出血が少ない

骨粗鬆症の患者にも適している可能性がある

 

限界・課題

 

研究数がまだ少ない:RCT(信頼性の高い臨床試験)が3件と少なく、結論を出すには情報不足です。

患者の骨の状態を考慮していない試験もある:骨密度の低い人への効果は今後の課題です。

術者の技術が必要:新しい手技のため、すべての施設で対応しているとは限りません。

 

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【まとめ:CBT法は期待される技術!ただし慎重な選択を】

 

今回紹介した論文では、「CBT法は従来法と比べて遜色なく、むしろ術中の安全性では優れている」との結果が出ました。

 

とはいえ、研究数が少ないため、「CBT法が絶対に優れている」とは言い切れません。

 

患者さんの骨の状態や手術する医師の経験も考慮した上で、適切な術式を選ぶことが大切です。

 


引用文献

  1. Ibrahim MT, Veliky C, Yu E.
    Outcomes after Cortical Bone Trajectory Screw versus Traditional Pedicle Screw in Single-Level Lumbar Spine Surgery: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials.
    Spine Surg Relat Res. 2025;9(3):289-299. doi:10.22603/ssrr.2024-0292
  2. Marengo N, Matsukawa K, Monticelli M, Ajello M, Pacca P, Cofano F, Penner F, Zenga F, Ducati A, Garbossa D.
    Cortical Bone Trajectory Screw Placement Accuracy with a Patient-Matched 3-Dimensional Printed Guide in Lumbar Spinal Surgery: A Clinical Study.
    World Neurosurgery. 2019;132:e1-e7. doi:10.1016/j.wneu.2019.05.241

 

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