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ストレートネックは病気じゃない?20代女性の3割が首のカーブ"逆転"の理由を解説

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ストレートネックは病気じゃない?20代女性の3割が首のカーブ"逆転"の理由を解説

首の骨、つまり頸椎(けいつい)は、通常は前にカーブしていると言われてきました。しかし、「ストレートネック」や「首がまっすぐ」といった診断を受け、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

ですが、最新の大規模研究によると、**20代では頸椎のカーブ(前弯:ぜんわん)が半分以下で、特に女性では約3割が首が逆向きに反っている(後弯:こうわん)**ことが分かっています。
今回はこの「ストレートネックは本当に異常なのか?」「なぜ若い女性に後弯が多いのか?」を科学的データをもとにわかりやすく解説します。


【頸椎前弯の正常値とストレートネックの定義】

頸椎前弯とは、首の骨が自然に前方へカーブしている状態のことです。このカーブが小さい、あるいは逆にカーブしている(後弯)場合、「ストレートネック」と呼ばれることがあります。

ところが、今回ご紹介する研究(Yukawaら, 2016)では、健康な20代女性の約3割が首のカーブが後ろ向き、つまり後弯であることが分かりました。また、20代の男女の多くが前弯が非常に小さいか、ほとんどない状態だったのです。

このことから、「ストレートネックは病気」や「異常」という認識は誤りであり、実際には正常な若年者の間でもごく一般的なバリエーションであることがわかります。


【ストレートネックは本当に問題?科学的に見た健康への影響】

「ストレートネック」と診断された方が不安になる気持ちはよくわかります。しかし、健康な人の中でもストレートネックや後弯は多く見られ、それだけで病気とは限りません

実際にこの研究の結果では、

  • 20代の女性の約3割が頸椎後弯(首が逆カーブ)
  • 20〜30代は前弯の角度がとても小さい人が多い
  • 年齢とともに徐々にカーブが増加するが、これは自然な加齢変化

ということが明らかになりました。

症状(首の痛みやしびれ)がない場合、「ストレートネック」は正常のバリエーションであり、必要以上に心配することはありません。


【年齢・性別で異なる頸椎の特徴と知っておきたい「正しい知識」】

頸椎のカーブ(前弯)は年齢や性別によって違いがあります。

  • 20代では半分以上がカーブがほとんどない
  • 30代以降、徐々にカーブが大きくなる傾向
  • 特に若い女性は前弯が小さく、約3割が「後弯」
  • 60代〜70代ではカーブが大きくなりやすい

このように、頸椎のカーブは成長や加齢による自然な変化であり、個人差が大きいのです。


【若い女性の頸椎後弯は腰椎前弯の"代償"!脊椎バランスから見るその理由】

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背骨のカーブは連動している

背骨は横から見ると首・胸・腰・骨盤で緩やかなS字カーブを描きます。このカーブは、全身のバランスを取るために各部が互いに影響しあっています

たとえば、腰の骨(腰椎)が大きく前にカーブしている、いわゆる"反り腰"になると、重心が前方に移動しやすくなります。体は無意識のうちに首(頸椎)のカーブを逆方向(後弯)にすることで、頭の位置を骨盤の真上に戻そうとします。

医学的な根拠

今回の研究では、若い女性は腰椎の前弯(反り腰)が男性よりも大きい傾向があり、同時に頸椎後弯も多いことが分かっています。

これは医学的に「代償(compensation)」と呼ばれる現象で、ある部位のカーブが強い場合、別の部位で逆向きのカーブを作ってバランスを保つ体のしくみです。

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さらに、脊椎外科分野では「コーン・オブ・エコノミー」理論があり、人はエネルギー効率の良い姿勢=頭を骨盤の真上に保つために、脊椎のカーブを調整しているとされています。

実際、論文中にも「腰椎前弯が変化すると、胸椎や骨盤の角度、そして頸椎のカーブも連動して変わる」ことが示されています。つまり、「若い女性の頸椎後弯」は、腰椎の大きな前弯への"バランス調整"として生まれる正常な現象なのです。

女性に多い理由

女性は骨盤が広く、腰椎の反りも大きくなりやすい体の構造を持っています。そのため、自然と頸椎が後弯になりやすい、つまり「ストレートネック」や「逆カーブ」がよく見られるのです。


【まとめ】

  • ストレートネックは決して異常や病気ではありません。
  • 特に20代〜30代、女性は首がまっすぐや逆カーブでも正常の範囲です。
  • それは腰椎のカーブとのバランスをとる体の自然な調整反応です。
  • 痛みやしびれなどの症状がなければ、過度な心配は不要です。

背骨のカーブは一人ひとり異なり、年齢や体型によっても変化します。「首がまっすぐ」と言われても、それはあなたの体に合ったバランスかもしれません。

もし首や腰の痛み、手足のしびれなど症状がある場合は、脊椎外科や整形外科専門医に相談しましょう。ですが、症状がなければ「ストレートネック」はあなたの体の個性の一つです。

正しい知識で、自分の体に自信を持ち、無理なく健康を守っていきましょう。


引用論文

Yukawa Y, Kato F, Suda K, Yamagata M, Ueta T, Yoshida M.
Normative data for parameters of sagittal spinal alignment in healthy subjects: an analysis of gender specific differences and changes with aging in 626 asymptomatic individuals.
Eur Spine J. 2016; DOI: 10.1007/s00586-016-4807-7

 

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