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分離すべり症の手術後に再手術が多いのはどれ?最新研究で明らかに
分離すべり症の手術、再手術が少ないのはどれ?前方・後方・併用術式の比較
【分離すべり症とは?--若年から中年に多い腰のトラブル】
分離すべり症は、腰椎(ようつい)の後方にある「椎弓(ついきゅう)」が切れてしまい、
その結果、椎骨(背骨の骨)が前方にずれてしまう病気です。
多くは第5腰椎と仙骨の間(L5/S1)に起こり、
若年時のスポーツなどによるストレスでの疲労骨折が原因と考えられています。
偽関節や、不安定性が残ると腰痛や脚のしびれ、力が入りにくいといった症状があり、
生活に支障が出る場合は手術による脊椎固定が行われます。
しかし、手術方法は複数あり、どの術式が再手術になりにくいかは、
これまで明確ではありませんでした。
【 4つの術式を比較!再手術率が最も低かったのは?】
この研究では、2015年から2020年の間に1014人の分離すべり症患者のデータが解析されました。
対象は単独レベルの脊椎固定術を受けた65歳以下の人たちです。
手術方法は以下の4つに分類されました。
- ALIF単独(前方進入による椎体間固定)
- PLF単独(後外側からの固定)
- PLIF/TLIF(後方進入で椎体間固定)
- ALIF+PSF(前方固定に加えて後方からのスクリュー補強)
- 後方固定の中にも椎間板を切除して椎体間固定術を行うPLIFと椎間板は切除せずに後方の横突起に骨移植を行うPLFがあります。
結果は次のようになりました。
- PLIF/TLIF:再手術率が最も低い
- ALIF+PSF:PLIF/TLIFとほぼ同等の成績
- PLF単独:再手術率やや高め
- ALIF単独:再手術率が最も高い(PLIF/TLIFの約5.8倍)
このことから、前方だけ、あるいは後外側だけの固定よりも、
椎体間の安定をしっかり確保できる術式が長期的には有利であることが示唆されました。
【 なぜ再手術になる?術式ごとの弱点と選び方のヒント】
再手術が必要になった理由は主に以下の3つです。
- 偽関節(骨がしっかりくっつかなかった)
- インプラントのゆるみや破損
- 神経の圧迫再発や新たな脊柱管狭窄
中でもALIF単独術式では、後方からの支えがないため、
固定が不十分になりやすく、器具の緩みや偽関節が多く見られました。
一方、PLF単独でも椎体間固定を行わないため、
骨の癒合率がやや低くなり、再手術のリスクが上昇していました。
一方で、PLIFやTLIFでは椎体間にケージ(人工の骨スペーサー)を入れ、
さらに背面からスクリューでしっかり固定するため、
術後の安定性と骨癒合率が高くなり、再手術が少ない結果となりました。
また、ALIF+PSFのように前後から支える方法は、
ALIF単独に比べて明らかに再手術率が低く、
手術の負担はやや大きくなるものの、長期成績は良好でした。
【まとめ】
分離すべり症に対する手術方法は複数ありますが、
長期的に見たときに再手術率が少ないのは「PLIF/TLIF」であることが、
今回の1014人の大規模データから明らかになりました。
前方のみ、後方のみといった単独アプローチよりも、
椎体間の安定性を高める工夫がされている術式の方が、
再発のリスクを抑えられる傾向にあります。
もちろん、患者さんの状態や年齢、骨の質、
希望される社会復帰時期などによって最適な方法は異なります。
本研究はあくまでも「再手術率」という観点から見た統計ですが、
術式選択の際の大きな判断材料になるでしょう。
気になる方は、ぜひ専門医と相談のうえ、
将来を見据えた最適な治療法を選んでください。
【引用論文】
Durand WM, Quan T, Parekh Y, et al.
A Comparative Analysis of Revision Rates in Surgical Treatments for Lumbar Isthmic Spondylolisthesis.
Global Spine Journal. 2025. DOI: 10.1177/21925682251326914
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