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夜勤と感染症の深い関係:睡眠不足があなたの免疫力を蝕むメカニズムを解説!
【1. 夜勤勤務と感染症の関係:看護師を対象にした大規模調査から見えた事実】
24時間体制の医療現場では、夜勤勤務が避けられません。今回紹介するノルウェーの研究では、看護師1,335人を対象に、夜勤と感染症の関係を調査しました。
その結果、夜勤勤務をしている看護師は、日勤のみの看護師よりも風邪(いわゆる「普通のかぜ」)にかかるリスクが高いことが分かりました。特に、年に1〜20回の夜勤をしているグループでリスクが高まりました。
一方で、肺炎や副鼻腔炎(鼻の奥の炎症)、胃腸炎(吐き気や下痢を伴う感染症)については、夜勤の有無による有意な差は見られませんでした。つまり、「夜勤=全ての感染症リスクが高まる」とは限らないようです。
【2. 睡眠時間よりも重要な「睡眠負債」:感染症との関係が明確に】
本研究のもう一つの大きな発見は、「実際の睡眠時間」よりも「睡眠負債」が感染症リスクに影響を与えているという点です。
「睡眠負債」とは、自分が必要だと感じている睡眠時間に対して、実際の睡眠時間が足りていない状態を指します。たとえば「8時間寝ないとすっきりしない」という人が6時間しか眠れていない場合、2時間の睡眠負債があることになります。
この睡眠負債が大きいほど、以下のような感染症にかかるリスクが高まることが判明しました。
- 普通の風邪(2時間以上の睡眠負債で2.32倍のリスク)
- 肺炎・気管支炎(同3.88倍)
- 副鼻腔炎(同2.58倍)
- 胃腸炎(同2.45倍)
特に注目すべきは、睡眠時間が短いだけではこれほど明確なリスク上昇は見られなかった点です。つまり、「何時間寝たか」よりも「自分にとって足りているか」が免疫に関わってくるのです。
【3. 対策と今後の展望:睡眠を見直すことが感染症予防の第一歩】
この研究から分かることは明確です。夜勤勤務と睡眠負債は、感染症に対する体の防御力を下げる可能性があるということです。
一方で、「睡眠時間を確保すればいい」と単純に考えるのは早計です。重要なのは、個人にまた、夜勤後の休息日を設けたり、夜勤の連続を避けたりするなど、勤務シフトを見直すことも重要です。実際、ノルウェーでは以下のような対策が提案されています。
とって十分な睡眠をとること。つまり、「質」も「量」も必要というわけです。
- 前方回転型のシフト(朝→昼→夜という順で回す)
- 夜勤の連続回数を制限
- 夜勤後の十分な休日の確保
- 職場全体で睡眠の重要性を啓発
さらに、今回の研究は看護師に限った調査ではありますが、夜勤や交代勤務に従事する全ての職種に共通する知見とも言えるでしょう。夜勤がある方は、ぜひ自身の睡眠習慣を振り返り、無理を感じていないか見直してみてください。
【まとめ】
今回紹介したノルウェーの大規模研究から、「夜勤勤務」と「睡眠負債」が、風邪やその他の感染症のリスクを高めることが明らかになりました。短い睡眠時間そのものよりも、自分にとって必要な睡眠が足りていない「睡眠負債」が重要なリスク要因であることが示されています。
働き方や生活スタイルの工夫次第で、感染症のリスクは下げることができます。自分にとっての「最適な睡眠」を見つめ直すことが、明日からできる最も身近な健康対策なのかもしれません。
【引用論文】
Hosøy, D. H., Ørner, P. B., Pallesen, S., Saxvig, I. W., Bjorvatn, B., & Waage, S. (2025). Night work and sleep debt are associated with infections among Norwegian nurses. Chronobiology International, 42(3), 309-318. https://doi.org/10.1080/07420528.2025.2455147
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