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膝の痛みの原因を見逃さない!MRI画像でわかる"半月板後方根断裂"の新しいサイン
【半月板後方根断裂とは?その重要性と見逃されやすさ】
膝の関節内にある「半月板」は、衝撃を吸収し関節の動きをなめらかにする重要な軟骨組織です。
この半月板のうち、内側の後方部分(後方根)が断裂することを「半月板後方根断裂(Medial Meniscus Posterior Root Tear:MMPRT)」と呼びます。
この断裂は、加齢に伴う変性や急な動きによって発生しやすく、高齢者や中高年に多く見られます。
しかし、症状が軽いこともありMRIを用いても見逃されるケースがあるため、整形外科の現場でも診断の難しさが課題となってきました。
MMPRTの最も大きな問題点は、放置した場合に膝関節の機能が急激に低下し、取り返しのつかない状態へと進行するリスクが高いことです。
具体的には、半月板の後方根が断裂すると、関節内の荷重分散が失われるため、骨同士が直接ぶつかりやすくなります。
その結果、膝の骨が壊死(骨が死んでしまう状態)したり、軟骨の摩耗が進んで変形性膝関節症が急速に進行してしまうこともあります。
こうなると保存療法や部分的な修復手術では間に合わず、人工膝関節置換術(人工関節への置き換え手術)を余儀なくされるケースも少なくありません。
そのため、MMPRTは早期発見と適切な治療が非常に重要な疾患です。
【MRI画像で"厚くなる半月板"に注目!新たなサインの登場】
今回紹介する論文では、「内側半月板が厚くなっていること」もMMPRTの重要なサインであると報告されました。
この研究は日本の173名の患者さんの膝MRIを分析したもので、MMPRTのある人と他の半月板損傷の人、そして健常なACL損傷患者のグループに分けて比較しました。
その結果、MMPRTのある人の内側半月板は平均10.7mmと明らかに厚くなっており、他の損傷では8.1mm、正常群では7.1mmと有意差が見られたのです。
この「厚くなった半月板(MTMM:Maximal Thickness of the Medial Meniscus)」は、10mmを超えるとMMPRTの可能性が高いという明確な指標になります。
この所見の素晴らしい点は以下の通りです。
- 直感的でわかりやすく、誰でも測りやすい
- 再現性が高く、観察者間での誤差が少ない
- 特異度(他の疾患との区別精度)が非常に高い(94.2%)
つまり、MRI画像の"厚み"を見るだけで、見逃しがちなMMPRTの早期発見につながるということです。
【臨床応用と注意点:すべての患者に10mmが当てはまるわけではない】
ただし、この新しいサインにも注意点はあります。
この研究は日本人を対象としており、他の人種や体格差のある集団に当てはまるかは未確認です。
たとえば、アジア人と欧米人では膝の骨の形や半月板の厚みに違いがあることが知られており、他の国や人種の患者にこの10mm基準をそのまま当てはめるのは慎重になる必要があります。
また、研究のコントロール群(正常群)は20〜30代の若年者が中心だったのに対し、MMPRTの患者は50代以上が多く、加齢による自然な変化も厚みの増加に影響を与えている可能性があります。
そのため、年齢や体格を考慮しながら"相対的に厚いかどうか"を見る視点も重要です。
【まとめ:MMPRT診断に"厚み"の指標を加えよう】
膝の痛みや違和感があるとき、MMPRTの存在は見逃せません。
その診断において、内側半月板の厚み(MTMM)という新しい所見を活用することで、より正確な判断が可能となります。
特に、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。
- MRIの冠状断で内側半月板が10mmを超えていれば、MMPRTの可能性が高い
- 他のサイン(ゴーストサイン、エクストルージョン)と併用することで診断精度が向上
- 体格や年齢による違いを考慮しながら観察することが大切
そして何より、MMPRTを早期に見つけて対処することが、将来の人工関節手術を避けるために極めて重要です。
関節の変形や骨壊死といった重篤な状態に進行する前に、画像からのサインを見逃さず、適切な処置につなげることが患者さんのQOL(生活の質)を守るカギとなります。
引用論文
Bi AS. Not Only Extrusion! A Thickened Medial Meniscus on Coronal MRI Also Points to Medial Meniscal Posterior Root Tears. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery. 2025. doi:10.1016/j.arthro.2025.03.049
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