成尾整形外科病院

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熊本そけいヘルニア整形外科クリニック

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体重を減らすと膝の痛みも軽くなる?食事と運動で変わる関節の健康

 

【膝の痛みと体重の関係】食事と運動で変形性膝関節症の症状は本当に改善するのか?

【背景と研究の目的】体重と膝痛の関係性に注目が集まる理由

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変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)は、中高年に多く見られる膝関節の病気で、関節の軟骨がすり減ることで慢性的な痛みや運動障害を引き起こします。 

肥満はこの病気の主な原因の一つとされており、体重増加による膝への負担が大きな影響を及ぼします。

 

これまでの研究では、大学病院などの専門施設において、減量と運動の組み合わせが膝の痛みを軽減することが確認されてきました。 

しかし、現実の生活環境である地域社会において、同様の方法がどれほど効果を発揮するかは十分に分かっていませんでした。

 

この研究の目的は、地域のコミュニティにおいて、減量と運動のプログラムが膝の痛みの改善に効果があるかを検証することです。

 

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【研究の方法と概要】823人を対象とした大規模臨床試験

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本研究は、アメリカ・ノースカロライナ州の3つの地域で実施された無作為化比較試験です。 

対象となったのは、50歳以上で体格指数(BMI)が27以上の、膝の痛みを抱える男女823人です。

 

参加者は、次の2つのグループに無作為に分けられ、18か月間にわたって追跡調査が行われました。

 

- 食事と運動プログラムに参加した介入群(414人) 

- 健康教育を受けただけの対照群(409人)

 

主要な評価項目は、自己申告による膝の痛みのスコアで、数値が高いほど痛みが強いことを示します。

 

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【主な結果】痛みの軽減は確認されたが、その差は小さかった

 

膝の痛みのスコア(WOMAC)において、以下のような変化が見られました。

 

- 介入群は、7.4から5.0に減少(改善) 

- 対照群は、7.4から5.5に減少 

- 両群の差は、0.6ポイントで統計的には有意(P=0.02)

 

しかし、臨床的に意味があるとされる差(1.6ポイント)には届かず、 

「明確な痛みの改善」と感じられるほどの変化ではなかった可能性があります。

 

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【その他の改善効果】体重や運動能力にも明らかな効果が

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痛みの変化は小さかった一方で、体重や体力などの項目には有意な改善が見られました。

 

● 平均体重の減少 

介入群:マイナス7.7キログラム(体重の8パーセント減) 

対照群:マイナス1.7キログラム(体重の2パーセント減) 

 

● 腰回りのサイズ 

介入群は平均5センチの減少。体脂肪の減少が示唆されます。

 

● 6分間歩行距離 

介入群は平均43メートルの増加。歩行能力の向上が確認されました。

 

● 膝の機能スコア 

日常動作のしやすさを示すスコアでも、介入群の方が有意に改善。

 

これらの結果から、食事と運動による介入は、痛みの緩和だけでなく、 

体力の向上や生活の質の改善にも貢献することが明らかになりました。

 

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【さらに注目すべき点】一部の人には確かな改善が見られた

 

個別の改善率を見てみると、2ポイント以上の痛みの改善を実感した人の割合は次の通りでした。

 

- 介入群:60.2パーセント 

- 対照群:49.7パーセント 

- 改善リスク比:1.20(介入群の方が20パーセント高い)

 

つまり、平均的な差は小さくても、一定数の人には実際に効果があったことが分かります。

 

また、介入群の32パーセントが目標とされた体重10パーセント減を達成し、 

87パーセントが18か月後に体重が減少していました。

 

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 【まとめ】食事と運動は、膝の健康を守る第一歩

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この研究から分かることは、次の3点です。

 

1. 食事と運動による減量は、膝の痛みをある程度和らげる 

2. 痛みの変化は小さくても、体重や体力の改善という大きな健康効果がある 

3. 地域社会でも、専門施設と同様のプログラムが効果を発揮する可能性がある

 

変形性膝関節症の治療は、薬や注射だけではありません。 

「生活そのものを見直すこと」が、痛みの根本改善につながる可能性を持っています。

 

自分のペースで、無理なくできる範囲から、ぜひ取り組んでみてください。

 

参考文献

Messier SP, Beavers DP, Queen K, 他 

Effect of Diet and Exercise on Knee Pain in Patients With Osteoarthritis and Overweight or Obesity: A Randomized Clinical Trial 

JAMA. 2022年12月13日;328(22):2242-2251. doi:10.1001/jama.2022.21893

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