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大腿骨近位部骨折の手術は何時間以内がベスト?48時間以内手術の最新知見

【大腿骨近位部骨折、48時間以内手術の最新知見】

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高齢者の大腿骨近位部骨折は、生活に大きな影響を与える重大な症状です。この骨折に対して、いかに早く手術を行うかが、体力の回復や生存率に直結することがわかっています。

ドイツの大型研究によると、入院から手術までの時間が48時間以内であれば、病院内死亡率は上昇しないことが確認されました。これは、24時間以内での手術を絶対視するものではなく、体力を整えるための待機時間が待てることを示しています。

【大腿骨近位部骨折の「48時間の壁」とは?】

日本では2022年より、大腿骨近位部骨折に対して「48時間以内の早期手術」に診療報酬の加算付加費ができるようになりました。しかし、現場では48時間内の手術を実現するのは容易ではありません。

まず、優先すべきは「急なスケジュール管理」です。多くの病院では、急な手術に対応するための操作室確保やスタッフ確保が難しい現実があります。

【なぜ48時間なのか?生存率と合併症にみる実情】

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なぜ48時間なのか?

それは、大腿骨近位部骨折が、日常生活労動能力(ADL)の保持、生命予後、並びに合併症の発生を防ぐことに結びつくからです。

実際には、48時間以内に手術を行うことで、早期離床を開始することで、せん妄ならびに深部静脈血栓症(DVT)の発生を防ぐことができます。

これによって、大きな合併症を防ぐことで生存率の向上を目指せるのです。

【早期手術の実現に向けた改善策】

より591件の実際の研究でも明らかになったように、入院までの時間を短縮することも重要です。

また、病院においても、手術室の確保,手術構成を有効に利用することが望ましいです。

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そのためには、多職種の合同(整形外科、内科医、救急医、看護師、理学療法士などの骨折チーム)を立ち上げ、より早期実現に向けて力を合わせることが必要です。

【まとめ】

大腿骨近位部骨折に対する手術は、48時間以内を目標にすることで、生存率の向上や合併症の防止が望めます。しかし、そのためには、入院から手術までの早期実施プログラムと病院全体の協力が求められます。


【参考文献】

  • Fenwick A, et al. Early surgery? In-house mortality after proximal femoral fractures does not increase for surgery up to 48 h after admission. Aging Clinical and Experimental Research (2023)
  • 松下高義,村岡貞彦,上野宜力,長谷亮,竹内潤,田中雅基,山下学,市川理一郎,水島正栖,松尾卓見,米盛公治:高齢者大腿骨近位部骨折の早期手術 ―48時間の壁を越えるには―. 『整形外科と災害外科』73(1):54-56,2024.

 

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