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骨粗鬆症性椎体骨折にBKPは本当に効く?保存療法との比較結果まとめ

骨粗鬆症による椎体骨折にBKPは本当に効くのか?最新研究でわかった保存療法との違い

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骨粗鬆症による椎体骨折(以下、OVF)は、高齢者に多くみられるつらい疾患です。日常生活が大きく制限されるだけでなく、寝たきりのリスクや死亡率の上昇にも関係するといわれています。

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今回紹介するのは、BKP(バルーン椎体形成術)と従来の保存療法を比較した世界最新のシステマティックレビューです。この研究では、痛みや生活の質、機能改善といった観点から両者の効果が詳しく検証されています。


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【1】痛みの軽減効果:BKPは即効性に優れる

OVFの主な症状といえば、やはり「痛み」です。今回の研究では、痛みの変化を視覚的評価スケール(VAS)という方法で評価しており、その結果が明確に示されています。

BKPを受けた患者は、治療後1か月で平均2.3ポイントの痛みの軽減を示しました。これは保存療法に比べて、はっきりとした違いがあります。しかも、その効果は3か月、6か月、12か月と時間が経過しても持続していました。

保存療法でも徐々に痛みはやわらぐ傾向がありますが、BKPのほうが明らかに「速く・大きく」痛みを軽減できるというのがこの研究の結論です。

また、治療による副作用や合併症のリスクも比較されましたが、新たな骨折の発生率に有意差は見られず、安全性にも大きな差はないとされています。


【2】日常生活機能の改善:初期の回復スピードでBKPが有利

椎体骨折が与える影響は痛みだけではありません。「歩く・立つ・着替える」など、日常生活のさまざまな動作に支障が出ます。

この研究では、機能障害を評価する指標(ODIやRMDQ)を使って、日常生活の改善度も調査されました。その結果、BKPは1か月後・3か月後の機能改善で有意な効果を示しています。

たとえば1か月時点での改善度(標準化平均差)は1.08ポイントと大きな差があり、保存療法よりも早く回復していることがわかります。

ただし、6か月後や12か月後になるとその差は縮まり、統計的には有意差が見られないケースもあります。つまり、BKPの最大の強みは「早期回復」にあるといえるでしょう。


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【3】骨の変形予防と生活の質:BKPで背骨の形状も守れる

椎体骨折では、椎体(背骨の骨)の潰れや変形が起こり、いわゆる「円背(猫背)」になります。これは見た目だけでなく、呼吸機能や内臓の位置にも影響する重要な問題です。

BKPでは、バルーンで潰れた椎体を一度膨らませてからセメントを注入するため、骨の高さをある程度回復させることが可能です。この研究でも、前方の椎体高が約10%改善し、その効果は24か月後も維持されていました

さらに、健康関連の生活の質を評価するEQ-5Dという指標でも、BKP群は保存療法群よりも高いスコアを維持しており、QOL(生活の質)の向上にも貢献することが示されています。


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【BKPはこんな人におすすめ】

このシステマティックレビューの結果から、BKPは以下のような方にとって有効な治療選択肢といえるでしょう。

  • 強い痛みで日常生活が困難な方
  • 保存療法で効果がみられない方
  • 早期に痛みを改善し、動ける状態に戻りたい方
  • 背骨の変形をなるべく防ぎたいと考えている方

ただし、治療効果は時間とともに徐々に縮まっていくため、早期の判断が重要です。また、BKPにもリスクは伴うため、信頼できる整形外科専門医と相談のうえで判断してください。

 


【引用論文】

Encalada S, Hunt C, Duszynski B, et al. The effectiveness of balloon kyphoplasty compared to conservative treatment for osteoporotic vertebral compression fractures: A systematic review and meta-analysis. Interventional Pain Medicine. 2025;4:100569. https://doi.org/10.1016/j.inpm.2025.100569


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