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骨粗鬆症による椎体骨折は早期治療がカギ!バルーン椎体形成術の効果を徹底解説
【1】骨粗鬆症による椎体骨折とは?~高齢者に多い背骨のトラブル~
加齢に伴い骨がもろくなる「骨粗鬆症」は、特に女性に多く見られる病気です。
その結果として起こる「椎体骨折(ついたいこっせつ)」は、日常生活に支障をきたすほどの強い腰痛を引き起こすことがあります。
この骨折は、転倒などの強い衝撃がなくても、くしゃみや重い荷物を持ち上げた拍子に起こることもあります。
そのため「いつの間にか背骨が折れていた」ことに気づかず放置されるケースも少なくありません。
このような骨折には、保存療法(安静や装具など)と手術療法の選択肢があります。
その中でも「バルーン椎体形成術(Balloon Kyphoplasty)」は、骨折した椎体をバルーンで膨らませて元の高さに戻し、そこに骨セメントを注入する新しい治療法です。
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【2】手術のタイミングが重要!~早期 vs 遅延でどう違う?~
今回ご紹介する論文は、手術のタイミングが患者の痛みや骨の変形にどのような影響を与えるかを、9つの研究をもとに分析しています。
◎研究の概要:
- 対象:骨粗鬆症による椎体骨折のある高齢者(平均73〜74歳)
- 「早期手術」:骨折から4週間以内
- 「遅延手術」:4週間を超えてからの手術
- 評価項目:痛みのスコア(VAS、ODI)、後弯角度、骨の高さの回復など
◎主な結果:
- 痛みの軽減効果は、早期手術の方が明らかに高かった(統計的に有意)
- 背骨の角度の改善(後弯の矯正)も早期手術の方が優れていた
- 骨の高さの回復や再骨折のリスクには差がなかった
つまり、手術はできるだけ早く受けた方が痛みの軽減や姿勢の改善につながるということが分かりました。
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【3】なぜ早い方がいいのか?~その理由と今後の課題~
では、手術はなぜ早ければ早いほど良いのでしょうか?
その理由は以下の3つです。
① 骨の柔軟性が残っている
骨折直後の椎体はまだ固まりきっておらず、バルーンで元の形に戻しやすい状態にあります。
時間が経過すると、骨が変形した状態で固まってしまい、矯正が難しくなります。
② 痛みの改善が早く、早期に動ける
痛みが早く軽減されることで、患者さんはすぐに起き上がり、動き出すことができます。
これにより寝たきりを防ぎ、肺炎や筋力低下といった二次的な合併症の予防にもつながります。
③ 合併症のリスク軽減
一部の研究では、セメントの漏れなどの合併症は遅延手術の方が少ないとの報告もありました。
しかしながら、重大な症状につながるケースはほとんどなく、全体としては早期手術の方が総合的なメリットが大きいと考えられます。
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まとめ:骨粗鬆症性椎体骨折には早めの手術が効果的
この論文からは、骨粗鬆症による椎体骨折に対しては、できるだけ早い段階でバルーン椎体形成術を行うことが、痛みの軽減や姿勢の改善につながることが示されました。
もちろん、すべての患者さんが手術を受ける必要があるわけではありません。
しかし、保存療法で改善が見られず、日常生活に支障が出るような強い痛みがある場合には、早期に手術を検討することが大切です。
脊椎外科専門医として、患者さんのQOL(生活の質)向上のためにも、適切なタイミングでの治療が非常に重要であると強調したいと思います。
【参考論文】
Khan MA, Kisana H, Clay C, et al.
「The effect of time to balloon kyphoplasty on osteoporotic vertebral compression fractures: a systematic review with meta-analysis」
North American Spine Society Journal (NASSJ). 2025;21:100576.
https://doi.org/10.1016/j.xnsj.2024.100576
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