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腰痛・ヘルニアは"命に関わらない"けれど深刻?世界データで見る実態
【椎間板ヘルニアと腰痛:世界で最も広がる"見えない病"】
腰痛は、多くの人が一度は経験する身近な痛みです。
しかしこの腰痛、実は世界的にも最も健康寿命を縮めている原因の一つであることをご存知でしょうか。
国際的な研究「Global Burden of Disease(GBD)2017」によると、
腰痛は1990年から2017年の間、ずっと世界で最も多くの障害年(YLDs)を生み出してきた病気です。
YLDsとは「健康上の障害によって失われた年数」を意味します。
つまり命には関わらなくても、生活の質を長期間にわたり著しく低下させるということです。
この中で腰痛の主な原因の一つとされているのが「椎間板ヘルニア」です。
椎間板とは、背骨をつなぐクッションのような役割をする軟骨組織のことで、
その一部が飛び出し、神経を圧迫して痛みやしびれを引き起こす病気を椎間板ヘルニアといいます。
腰痛の背景には、加齢、運動不足、長時間の座位、肥満、ストレスなど多くの要因が複雑に絡んでいます。
現代のライフスタイルが腰痛を引き起こしやすくしているのは間違いありません。
GBD2017では、腰痛による障害は全世界の疾病負担のトップに位置づけられ、
その数はおよそ8億人分の「健康な生活年数」に相当します。
【増え続ける腰痛と椎間板ヘルニア:なぜ減らない?】
医療が進歩しても、なぜ腰痛や椎間板ヘルニアは減らないのでしょうか?
その理由の一つは、人類の寿命が延び、加齢による影響が大きくなったことです。
椎間板は年齢とともに弾力を失い、硬くなっていきます。
その結果、ちょっとした動作や長時間の負担で、ヘルニアを起こしやすくなるのです。
また、デスクワーク中心の仕事が増え、座りっぱなしの生活が常態化していることも原因です。
座る姿勢では、立っている時よりも腰への負担が大きくなります。
さらに、世界的な肥満率の上昇も無視できません。
体重が重くなるほど、腰への圧力が増し、椎間板にかかる負担も大きくなります。
GBD2017によれば、腰痛や椎間板ヘルニアの増加傾向は、
先進国だけでなく、発展途上国でも共通していることが明らかになっています。
これは、医療体制の違いや社会経済状況にかかわらず、
「腰に負担のかかる生活スタイル」が世界中に広がっていることを示しています。
【腰痛・椎間板ヘルニアに負けない生活術】
それでは、腰痛や椎間板ヘルニアのリスクを減らすにはどうすれば良いのでしょうか。
まず一番大切なのは、正しい姿勢を保つことです。
スマホやパソコンを見る時に前かがみになりがちですが、
この姿勢は腰への負担を大きくします。
次に、適度な運動を習慣化することも効果的です。
ウォーキングやストレッチ、体幹トレーニングは、腰回りの筋肉を強化し、椎間板の負担を減らしてくれます。
加えて、体重管理も重要です。
無理なダイエットは必要ありませんが、適正体重を維持するだけで腰の健康に大きな差が出ます。
もし腰痛やしびれが続く場合は、早めに整形外科を受診することをおすすめします。
MRIなどの画像検査によって、椎間板ヘルニアの有無を正確に診断することができます。
近年では、保存療法(薬・リハビリ)や、内視鏡を使った低侵襲手術や椎間板内酵素注入療法なども治療も進歩しており、 早期に治療を始めれば、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。
おわりに:見えない病、「腰痛」とどう向き合うか
椎間板ヘルニアや腰痛は、命を直接奪う病気ではありませんが、
生活の質を大きく下げ、長期にわたって心身に影響を及ぼす深刻な病気です。
GBD2017のデータは、私たちがどれほど腰の健康を見過ごしてきたかを教えてくれます。
日々の小さな習慣の積み重ねが、10年後、20年後のあなたの「自由な身体」を守ります。
「腰が痛いのは歳のせい」とあきらめず、今できることから始めてみましょう。
参考文献
GBD 2017 Disease and Injury Incidence and Prevalence Collaborators.
*Global, regional, and national incidence, prevalence, and years lived with disability for 354 diseases and injuries for 195 countries and territories, 1990-2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017*.
Lancet. 2018;392(10159):1789-858. DOI: [10.1016/S0140-6736(18)32279-7](https://doi.org/10.1016/S0140-6736(18)32279-7)
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