成尾整形外科病院

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膝の痛みを改善するにはヨガ?筋トレ?最新研究でわかった意外な結果とは?

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膝の痛みを改善するにはヨガ?筋トレ?最新研究でわかった意外な結果とは

膝の痛みで悩む方にとって、運動療法は治療の柱のひとつです。なかでも「ヨガ」と「筋力トレーニング(筋トレ)」はよく勧められる運動法ですが、どちらがより効果的かを直接比較した研究は多くありませんでした。今回は、その疑問に答えてくれる最新の臨床研究をご紹介します。

この研究では、オーストラリアのタスマニア州で行われたランダム化比較試験(RCT)により、ヨガと筋トレの効果が直接比較されました。その結果、どちらの運動も膝の痛みを改善する効果があることがわかり、特にヨガには嬉しい副次的な効果もあることが明らかになりました。


【膝の変形性関節症とは?その基本を理解しよう】

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膝の変形性関節症(OA)とは、関節の軟骨がすり減ることで炎症や痛みが起こる病気です。中高年に多くみられ、進行すると歩行困難や生活の質(QOL)の低下を引き起こします。

この病気は自然には治らず、進行を遅らせたり、痛みを和らげたりすることが治療の目的となります。その中で、運動療法は薬を使わずに症状を改善する方法として、世界中のガイドラインで推奨されています。

運動には主に「有酸素運動」「筋トレ」「柔軟体操」などがあり、今回の研究では「筋トレ」と「ヨガ」という2つのアプローチが比較されました。


【ヨガ vs 筋トレ:どちらが膝の痛みに効くのか?】

この研究では、40歳以上の膝痛患者117名が「ヨガグループ」と「筋トレグループ」に分けられ、12週間の介入が行われました。

いずれのグループも週に2回の対面指導と週1回の自宅練習を12週間、その後12週間は自宅で週3回の継続トレーニングを行うというプログラムです。

主要な評価項目は「膝の痛み(100mmスケール)」の変化で、12週間後に比較されました。

その結果、両方のグループともに膝の痛みは有意に改善し、しかも「ヨガは筋トレに劣らない(非劣性)」という結果が出ました。つまり、ヨガも筋トレと同様に効果があるということです。

さらに注目すべきは、副次的な効果です。24週間後の評価では、

  • 痛みの強さや関節のこわばり、機能面(WOMACスコア)でヨガがやや優位
  • 生活の質(QOL)やうつ症状の改善効果もヨガに軍配
  • ヨガの継続率が高かった(自宅での実施率70.2%)

など、ヨガが中長期的に心身ともに好影響を及ぼす可能性が示唆されました。


【膝OAにおけるヨガのメリットとは?】

ヨガの特徴は、「ポーズ(姿勢)」「呼吸」「マインドフルネス(意識の集中)」が組み合わさった総合的なアプローチです。このため、単に関節を動かすだけでなく、

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  • 筋肉の柔軟性とバランス感覚の向上ヨガリラックス.png
  • ストレスの軽減と自律神経の安定ヨガ痛みコントロール.png
  • 痛みに対する意識のコントロール(痛みの感じ方が和らぐ)

といった心身に働きかける多面的な効果があります。

一方で、筋トレは関節を支える筋力の向上に特化しており、「膝への負担を減らす」ことに優れています。どちらも効果的な方法ですが、ヨガは運動になじみのない方や、リラックスや精神面のケアも重視したい方に特に適していると考えられます。


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【まとめ:ヨガも筋トレも膝に効く!でも選び方が大切】

今回の研究から言えることは、「ヨガも筋トレも膝の痛みを改善する力がある」ということです。

加えて、

  • ヨガは痛み・機能・うつ・QOLの改善にやや優れている
  • 継続しやすい点でもヨガに利点がある
  • どちらも安全性が高く、有害事象は軽微

という結果から、好みやライフスタイルに合わせて選べることが明らかになりました。

膝の痛みでお悩みの方は、自分に合った運動を選んで続けることが何より大切です。医師や理学療法士と相談しながら、自分らしいケアを始めてみてはいかがでしょうか。

 

 

引用論文: Abafita BJ, Singh A, Aitken D, et al. "Yoga or Strengthening Exercise for Knee Osteoarthritis: A Randomized Clinical Trial." JAMA Network Open. 2025;8(4):e253698. doi:10.1001/jamanetworkopen.2025.3698

 

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