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高校野球ピッチャーの肩肘障害を予測!FMSテストでケガ予防

【高校野球ピッチャーの肩肘障害をFMSで予測できる?最新研究からわかったこと】

 高校野球肩肘障害.png

【FMSとは?高校球児の動きをチェックする新しい指標】

 

高校野球では、ピッチャーの肩や肘のケガが大きな問題になっています。 

特に長期間投げられなくなるような障害は、選手生命にも関わる深刻なものです。

 

そんな中、注目されているのが「FMS(Functional Movement Screen)」という身体の動きを評価するテストです。 

これは、基本的な7つの動作をチェックすることで、体の動かし方の癖やアンバランスを見つける検査方法です。

FMSには以下のような項目があります。

 The Functional Movement Screen .png

- ディープスクワット(しゃがみ込み)

- ハードルステップ(片脚での踏み出し)

- インラインランジ(片足前後の姿勢でのバランス)

- 肩の可動域テスト

- 体幹の押し上げ

- 片脚の上げ下げ

- ロータリースタビリティ(ねじり動作の安定性)

 

このテストによって、体幹の安定性や関節の柔軟性、左右差などがわかります。

 

【研究の概要と注目ポイント:ケガにつながる意外な「弱点」とは】

 

群馬大学の研究チームは、2017年に133人の高校野球ピッチャーを対象に、シーズン前のFMSテストを実施し、その後のケガの発生を追跡しました。 

そのうち右利きでケガの履歴がない90人が最終的に対象となりました。

 

シーズン中に肩や肘のケガをしたのは全体の22.2%(20人)で、その中で明らかになったのは、「ロータリースタビリティ(体幹のねじり動作の安定性)」のスコアが低い選手はケガのリスクが高いということでした。

 

具体的には、支配腕(右投げの場合は右側)のロータリースタビリティが低いと、ケガのリスクが5.3倍に増えるという結果が出ました。

 

意外だったのは、肩の可動域が広い選手の方がむしろケガをしていたという点です。ただし、これに関しては他の要因の影響もある可能性があり、最終的には独立したリスク因子とはされませんでした。

 

【なぜ体幹のねじり動作が重要?ケガ予防のためにできること】

 

ピッチングは全身を使った連動動作、つまり「運動連鎖(キネティックチェーン)」によって成り立っています。 

この連鎖の中で特に重要なのが「体幹」、いわゆる胴体の安定性です。

 

体幹がしっかりしていないと、下半身からの力をうまく腕に伝えることができず、肩や肘に無理な負担がかかってしまいます。 

つまり、ロータリースタビリティが低いということは、投球動作の中で「力のロス」が生じ、それを肩や肘で補おうとしてケガにつながってしまうのです。

 

この研究は、単なる筋力や柔軟性だけでなく、動作の「質」に注目してケガのリスクを予測できることを示した画期的なものです。

 

実際にこのFMSを用いることで、ケガを未然に防ぐトレーニングプログラムの立案が可能になります。 

例えば、体幹の安定性を高めるためのトレーニングや、左右のバランスを整えるメニューなどが考えられます。

 

 

【まとめ:FMSでケガの芽を摘む!高校球児の未来を守る新たな手段】

 野球投手剛速球.jpg

高校野球において、ピッチャーの肩や肘の障害は大きな問題です。 

これまでの検査では見落とされがちだった「動作の質」に着目したFMSを使えば、事前にケガのリスクを予測し、対策を立てることが可能になります。

 

特に、体幹のロータリースタビリティは、投球動作の要とも言える部分です。 

この能力が低い選手は、ケガのリスクが5倍以上にもなることがわかった今、トレーニングにおける重要なチェックポイントになるでしょう。

 

指導者の方々や保護者の皆さんも、このような新しい評価法に注目し、選手たちが長く健康にプレーできる環境を整えていくことが求められます。

 

この研究結果を元に、より科学的で効果的なケガ予防策が広がっていくことを期待したいですね。

 

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### 【引用論文】

Shitara H, Hamano N, Tajika T, et al. *The Preseason Functional Movement Screen as a Predictive Tool for Shoulder and Elbow Injuries in High School Baseball Pitchers: A Prospective Cohort Study*. Orthop J Sports Med. 2025;13(2):23259671241305607. DOI: [10.1177/23259671241305607](https://doi.org/10.1177/23259671241305607)

 

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