成尾整形外科病院

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【肩の激痛対策】石灰沈着性腱板炎に効く衝撃波治療とは?有効性と安全性

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 【石灰沈着性腱板炎とは?肩の激しい痛みの正体】

肩の痛みの原因にはいくつかありますが、その中でも「石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)」は、突然の激しい痛みを引き起こす代表的な疾患です。 

この病気では、肩の腱(とくに棘上筋という筋肉の腱)にカルシウムが沈着し、炎症や痛みを起こします。 

40〜50代の女性に多く、夜間痛や肩が動かせないほどの激痛が特徴です。 

通常は保存的治療(痛み止め、注射、リハビリ)から始めますが、痛みが長引く場合や再発を繰り返す場合には、手術を検討することもあります。 

そんな中、注目を集めているのが「体外衝撃波治療(ESWT)」です。これはメスを使わず、外から強い音波(衝撃波)を患部に当てることで、症状の改善を目指す治療法です。 

 

【ESWTとは?石灰沈着にどう作用するのか】

 

ESWTはもともと、腎臓結石(尿管結石)を砕くための治療として広まりました。 

その後、整形外科領域でも応用されるようになり、骨折がくっつかないケース(偽関節)や足底腱膜炎(かかとの痛み)、テニス肘などにも使われています。 

石灰沈着性腱板炎では、この衝撃波がカルシウム沈着物に衝撃を与え、粉砕・吸収を促すとともに、血流や組織再生を助けることで痛みを和らげると考えられています。 

特に「高出力ESWT(エネルギー密度0.28mJ/mm²以上)」が効果的とされ、海外では外来治療の選択肢として普及が進んでいます。 

実際の治療では、1回あたり1000~3000発の衝撃波を照射し、1~3回のセッションで行います。 

局所麻酔を併用する場合もあり、治療時間は10〜30分程度です。 

副作用としては、治療部位の赤み・腫れ・あざなどがありますが、ほとんどが一時的で自然に治まります。 

【ESWTの効果と科学的根拠:痛み・機能・石灰の消失】

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Hsuらの研究(2008年)は、46人の石灰沈着性腱板炎患者を対象に、ESWT群と偽治療群で比較しました。 

 結果として、1年後に痛みスコアはESWT群で大きく改善(平均7.2→1.3)、機能スコア(Constantスコア)も大幅に向上しました(平均57.3→88点)。 

一方、偽治療群では改善がほとんどみられませんでした。 

さらにレントゲン検査では、ESWT群の21.2%で石灰が完全に消失し、36.3%で部分的に消失しました。 

同様に、Bannuruらのシステマティックレビュー(2014年)でも、28件のランダム化比較試験(RCT)を解析し、高出力ESWTが痛み・機能・石灰吸収に対して明確な有効性を示したと報告しています。 

ただし、カルシウム沈着がない「非石灰性腱炎」には、ESWTの効果は限定的であるとも指摘されています。 

 【まとめ:石灰沈着性腱板炎に悩む方への希望としてのESWT】

石灰沈着性腱板炎は、通常の治療に反応しない場合も多く、再発を繰り返すことがあります。 

手術を避けたい、痛みから早く解放されたい、そんな方にとって「体外衝撃波治療(ESWT)」は大きな希望となり得る選択肢です。 

特に高出力ESWTは、科学的に効果が実証されており、安全性も高いことが確認されています。 

まだ日本国内ではあまり普及していない治療法ですが、今後さらに注目されることは間違いありません。  肩の痛みにお悩みの方は、一度整形外科専門医に相談してみてください。 

1. Hsu CJ, et al. *Extracorporeal shock wave therapy for calcifying tendinitis of the shoulder*. J Shoulder Elbow Surg. 2008;17(1):55-59. 

2. Bannuru RR, et al. *High-Energy Extracorporeal Shock-Wave Therapy for Treating Chronic Calcific Tendinitis of the Shoulder: A Systematic Review*. Ann Intern Med. 2014;160(8):542-549.

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