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骨盤の脆弱性骨折とは?高齢者に多い原因・症状・治療法を徹底解説
【骨盤の脆弱性骨折とは?高齢者に多いその特徴と診断】
骨盤の脆弱性骨折(Fragility Fractures of the Pelvis, FFP)は、高齢者に多くみられる骨折です。この骨折は、通常の健康な骨なら折れないような軽い衝撃でも起こります。特に骨粗しょう症を持つ高齢女性に多く、家庭内での転倒などが主な原因です。近年、高齢化の進行とCTやMRIの普及により、この骨折の診断数が増えています。
FFPは、交通事故などによる高エネルギー外傷の骨盤骨折とは異なり、骨の強度が低下した結果として発生する低エネルギー外傷が主な原因です。症状としては、股関節や恥骨、臀部、腰部に強い痛みを感じ、歩行が困難になります。出血は少ないものの、抗凝固薬を服用している患者では徐々に出血が進行し、低血圧ショックに陥る可能性もあるため、注意が必要です。
診断には、まずX線(レントゲン)撮影を行い、恥骨や仙骨の骨折を確認します。しかし、X線では骨折を見逃す可能性があるため、CT検査が推奨されます。MRI検査は、CTで明確な骨折が確認できない場合に追加検査として行われ、骨の内部損傷(骨挫傷)を検出するのに役立ちます。
【骨盤の脆弱性骨折の分類と治療法】
FFPは、その不安定性の度合いに応じて4つのタイプに分類されます。Rommens分類
1. FFPタイプI:前方骨盤(恥骨など)のみの骨折
2. FFPタイプII:後方骨盤(仙骨など)に軽度の骨折
3. FFPタイプIII:後方骨盤に重度の骨折(片側)
4. FFPタイプIV:後方骨盤に重度の骨折(両側)
治療方針は、骨折の不安定性によって異なります。
• タイプI・II(安定型):保存療法が基本。痛みを抑えつつ、できるだけ早期に動けるようにする。
• タイプIII・IV(不安定型):手術が推奨される。最小侵襲手術(MIS)が推奨され、仙骨スクリュー固定や経仙骨バー固定などの方法がある。
手術方法には、経皮的仙腸関節スクリュー固定、トランスイリアック内固定、腰仙部固定術などがあり、それぞれ患者の状態に合わせて選択されます。
【FFPの治療成績と生活への影響】
治療後の経過として、FFP患者は入院期間が長くなりがちですが、手術を受けた方が死亡率は低い傾向にあります。一方で、生活の質(QOL)や移動能力(モビリティ)は骨折の種類や治療法に関わらず低下することが多く、高齢患者にとっては大きな課題となります。
研究によると、手術後の患者の多くは歩行補助具を必要とし、生活の自立度も低下する傾向があります。そのため、骨粗しょう症の治療や転倒予防が非常に重要です。
FFPは高齢者の生活に大きな影響を与える骨折であり、適切な診断と治療が求められます。骨粗しょう症の管理や転倒防止策を徹底することで、この骨折のリスクを低減できる可能性があります。
【参考文献】 Rommens PM, Hofmann A. Fragility fractures of the pelvis: An update. J Musculoskelet Surg Res 2023;7:1-10.
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