成尾整形外科病院

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腰椎固定術後の再手術リスクを減らすには?下位腰椎の前彎角度がカギ!

【腰椎固定術後のASDとは?原因とリスク要因】

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腰椎の変性疾患に対して行われる腰椎固定術は、腰痛や神経症状の改善に有効な治療法です。しかし、手術後に隣接する脊椎の変性が進行し、新たな症状が出る「隣接椎間障害(ASD)」が問題となることがあります。

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ASDは、固定された脊椎の上下の関節に過剰な負担がかかることで発生すると考えられています。一般的に、腰椎固定術を受けた患者の約17%がASDのために再手術を必要とすることが報告されています。本研究では、ASDの発生リスクに影響を与える要因として「下位腰椎の前彎角度(L4-S1の前彎)と骨盤形状(骨盤傾斜角:PI)」に注目しました。

【下位腰椎の前彎角度とASDの関係】 本研究の結果によると、術後の下位腰椎前彎角度が35度未満の場合、ASDによる再手術のリスクが2.7倍に増加することが分かりました。つまり、手術後に下位腰椎の前彎を十分に確保することが、ASDの予防につながる可能性があるのです。

また、骨盤傾斜角(PI)が低い、または平均的な患者では、ASDのリスクが3倍に増加しました。PIが高い患者は、腰椎の自然なカーブが大きいため、下位腰椎の前彎が減少しても、全体的なバランスを保ちやすいと考えられます。しかし、PIが低い人は、前彎が不足すると代償機構が働きにくく、隣接椎間に過剰な負担がかかる可能性があります。

【ASD予防のための手術戦略】 本研究の結果から、ASDの予防には以下のポイントが重要と考えられます。

  1. 術後の下位腰椎前彎を35度以上に保つこと
  2. 骨盤傾斜角(PI)が低い患者では、特に前彎を意識した手術計画を立てること
  3. 変性すべり症の患者では、前彎の適切な回復を重視すること

これらのポイントを考慮することで、術後のASDリスクを軽減し、より良い長期的な治療成績が期待できます。

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【まとめ】 腰椎固定術後のASD発生は、多くの患者にとって大きな問題ですが、本研究により下位腰椎の前彎と骨盤形状が重要な要因であることが明らかになりました。術後の適切なアライメント調整により、ASDのリスクを低減し、より良い手術結果を目指すことが可能です。術前に患者さんそれぞれのPIを評価し、適切な遠位前弯角を形成するよう術者は術前計画を立ててASDを生じないアライメントを再建する必要があります。今後の研究によって、より効果的な手術戦略が確立されることが期待されます。

【参考文献】 Manoharan R, Cherry A, Raj A, et al. Distal Lumbar Lordosis is Associated With Reoperation for Adjacent Segment Disease After Lumbar Fusion for Degenerative Conditions. Global Spine Journal. 2025;15(1):143-151. DOI:10.1177/21925682241262704.

 

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