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医師の放射線被曝がもたらす危険!白内障と手の炎症リスクを徹底解説
【脊椎外科医を襲う目と手のリスク 〜放射線被曝がもたらす健康課題〜】
はじめに
脊椎外科医は、手術中に透視を使う機会が多く、その際に放射線にさらされることが知られています。しかし、実際に放射線がどの程度健康に影響を与えているかは十分に明らかになっていませんでした。今回の研究では、脊椎外科医における白内障や手の慢性的な炎症について調査され、放射線被曝との関連が明らかになりました。
【白内障のリスク 〜初期変化から視力低下まで〜】
白内障とは?
白内障は、目の中にある水晶体が白く濁る病気で、視力の低下を引き起こします。高齢者に多い病気ですが、放射線を浴びることで若い世代でも発症リスクが高まることが指摘されています。
研究結果
今回の研究では、162人の脊椎外科医を対象に目の検査を行い、以下のことがわかりました。
- 白内障の発症率は20%(32人)
- 初期変化である水晶体の微細な濁りは40%(64人)
- 特に後嚢下白内障(レンズの後ろ側の濁り)が多く、これは放射線被曝との関連が強いとされています。
驚くことに、40歳未満でも37%に白内障の初期変化が認められたことです。これは通常の年齢変化では説明がつかず、職業的な放射線被曝が要因である可能性を示唆しています。
【手の慢性炎症 〜黒い縦線と湿疹の正体〜】
どんな症状が現れる?
手の慢性炎症は、長期間放射線にさらされることで起こります。今回の研究では、次の2つの症状が注目されました。
- 縦方向の黒い線(縦走色素線、melanonychia)
- 湿疹(eczema)
これらは皮膚がダメージを受けた結果として現れ、放射線誘発性皮膚炎の初期兆候と考えられています。
研究結果
- 38%(62人)の医師に慢性炎症が確認されました。
- 縦走色素線は52人(32%)に、湿疹は23人(14%)に見られました。
- 手術室での放射線被曝が多い群(上位25%)では、炎症の発生率が63%と特に高くなっていました。
これは、日常的なフルオロスコピー使用が手の健康に直接影響を与えていることを示しています。
【放射線から身を守るために 〜安全対策と今後の課題〜】
なぜ放射線被曝は防ぎにくいのか?
脊椎手術は近年、低侵襲(身体への負担を減らす)手術が主流となっており、透視を使った正確な手技が求められます。この結果、放射線を浴びる機会が増えてしまいます。
効果的な対策
- 防護具の使用
- 鉛入りのエプロン、ゴーグル、手袋を着用することで被曝量を大幅に減らせます。
- 被曝量の管理
- 個人用線量計を使用し、自身の被曝量を定期的にモニタリングすることが重要です。
- 適切なポジショニング
- 透視機器と体の距離をできるだけ離すことで、被曝量を減少させられます。
【結論と今後の展望】
今回の研究により、脊椎外科医が日常的に直面している健康リスクが明らかになりました。白内障や手の慢性炎症は決して無視できない問題であり、今後はより安全な手術環境の整備が求められます。
放射線は「目に見えないリスク」だからこそ、正しい知識と対策を講じることが重要です。医療従事者自身の健康を守ることは、患者への最良の医療を提供する基盤となるのです。
【引用論文】
Hijikata, Y., Yamashita, K., Hatsusaka, N., et al. (2025). Prevalence of Cataractous Changes in the Eyes and Chronic Inflammatory Changes in the Hands Among Spine Surgeons. Journal of Bone and Joint Surgery, 00(00), 1-8. doi:10.2106/JBJS.24.00433
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