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骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折の再骨折リスクとは?最新の治療法と予防策を解説

【骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折の再骨折リスクとは?】

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骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折(OVCF)は、高齢者に多く見られる骨折の一つです。これを治療するために「経皮的椎体形成術(BKP)」という手術が広く行われています。しかし、手術後に再び骨折してしまうケースもあり、そのリスク要因についての研究が進められています。本記事では、最新のメタアナリシスをもとに、どのような要因が再骨折のリスクを高めるのか、またどのように予防できるのかを解説します。


【再骨折のリスクを高める要因】

最近の研究では、BKP後の再骨折リスクを高めるいくつかの要因が特定されました。

  • 年齢が高い:手術後に再骨折した人は平均76歳、再骨折しなかった人は74歳と、年齢が高いほどリスクが増加することが示されました。
  • 骨密度の低下:骨密度が低いほど骨の強度が弱まり、再骨折しやすくなります。
  • 術前の脊椎の変形
    • 椎体の前後の高さ比(AP比)が大きい場合、骨折の影響が強く、再骨折の可能性が高くなります。
    • 術前の後弯角(KA)が大きいと、背骨のバランスが崩れ、再骨折のリスクが上がることがわかっています。
  • 骨セメントの漏出:手術時に使用される骨セメントが漏れると、隣接する椎体への影響が大きくなり、再骨折の原因となる可能性があります。
  • 多椎体骨折の既往:すでに複数の椎体が骨折している場合、次の骨折のリスクがさらに高まります。
  • 喫煙:喫煙は骨の健康に悪影響を及ぼし、骨折のリスクを高める要因となります。
  • ステロイドの使用:ステロイド薬を使用していると、骨密度が低下し、再骨折しやすくなります。
  • 過去の骨折歴:以前に骨粗鬆症による脊椎骨折を経験した人は、再骨折のリスクが2.5倍高いと報告されています。

【再骨折を防ぐための対策】

再骨折を防ぐためには、以下のような対策が有効と考えられています。

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  • 骨粗鬆症治療の実施
    • 研究では、骨粗鬆症の治療を受けている患者は、再骨折のリスクが60%低下することが示されています。
    • ビスホスホネート製剤やデノスマブ、テリパラチド、アバロパラチド、ロマソズマブなどの薬剤を適切に使用することが重要です。
    • テリパラチドやアバロパラチドは骨形成を促進する薬剤で、骨密度の向上と骨折リスクの低減が期待できます。
    • ロマソズマブは骨形成を促進しつつ骨吸収を抑える効果があり、特に高リスクの患者に推奨されることがあります。
  • 骨セメントの適切な管理
    • 手術時に骨セメントの漏出を最小限に抑えることで、再骨折リスクを減らせます。
  • 生活習慣の改善
    • 喫煙を控え、骨の健康を維持するための食生活を心がけましょう。
    • ビタミンDやカルシウムの摂取を増やし、適度な運動を行うことも推奨されます。
  • ステロイドの使用を見直す
    • ステロイドを長期間使用している場合、医師と相談しながら骨への影響を考慮した治療計画を立てることが重要です。

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骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折の再骨折リスクは、年齢、骨密度、術前の骨変形、骨セメントの漏出、喫煙やステロイドの使用など、多くの要因によって左右されます。しかし、適切な骨粗鬆症治療、手術の工夫、生活習慣の改善を行うことで、再骨折のリスクを大幅に減らすことが可能です。

今後もさらなる研究が必要ですが、今回のメタアナリシスの結果を参考に、リスクを理解し、適切な対策を取ることが重要です。骨粗鬆症による骨折を防ぎ、健康的な生活を続けるために、医師と相談しながら最適な治療を選択しましょう。


【参考文献】Lin YH et al. What Risk Factors Are Associated With Recurrent Osteoporotic Vertebral Compression Fractures After Percutaneous Vertebral Augmentation? A Meta-analysis(Clinical Orthopaedics and Related Research, 2025年)

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