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膝のお皿が外れた!初回膝蓋骨脱臼(FTPD)の原因・治療・リハビリ完全ガイド
【初めての膝蓋骨脱臼(FTPD)の治療ガイドライン】
膝蓋骨(ひざのお皿)が初めて脱臼する「初回膝蓋骨脱臼(FTPD)」は、特にスポーツをする若い世代に多く見られます。適切な治療を受けることで、再発リスクを減らし、膝の安定性を取り戻すことができます。この記事では、FTPDの治療方法について、手術をしない方法と手術が必要な場合の選択肢をわかりやすく解説します。
【非手術療法:リハビリと装具の役割】
FTPDを初めて経験した場合、多くのケースでは手術をせずに治療が可能です。基本的な治療法としては、リハビリテーション(リハビリ)と装具の使用があります。
リハビリでは、大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)や股関節周りの筋肉を強化し、膝蓋骨が安定するようにトレーニングを行います。特に、内側広筋(大腿四頭筋の一部)を鍛えることで、膝蓋骨が外側へずれるのを防ぐことができます。
一方、装具(ブレース)の使用については、短期間の安定化には有効ですが、長期的な効果は明確ではないとされています。そのため、リハビリと並行して使用する場合もありますが、装具に頼りすぎないことが重要です。
【手術が必要な場合とは?】
すべてのFTPD患者が手術を受けるわけではありませんが、以下のようなケースでは手術が考慮されます。
- 骨がまだ成長過程にある若年層で、再発リスクが高い場合
- すでに脱臼を繰り返している場合
- 膝蓋骨の安定性に関与する靭帯(内側膝蓋大腿靭帯:MPFL)が大きく損傷している場合
- 軟骨や骨に損傷がある場合
手術では、MPFL再建術が一般的に推奨されます。これは、損傷したMPFLを新しく作り直す手術で、単なる修復よりも再発率が低く、安定した結果が得られるとされています。
また、膝蓋骨の脱臼リスクが高い骨格的な要因(膝蓋骨の位置異常や脛骨のねじれなど)がある場合は、それを修正する手術が組み合わされることもあります。しかし、どのような場合に追加手術を行うべきかについては、まだ議論の余地があり、患者ごとの状況に応じた判断が求められます。
【軟骨損傷の対応と治療の最適なタイミング】
FTPDの際に、軟骨や骨が損傷してしまうことがあります。特に、膝蓋大腿関節(膝のお皿と大腿骨が接する部分)に1cm²以上の損傷がある場合は、何らかの治療が推奨されます。
軟骨損傷がある場合、可能であれば破片を固定し、元の状態に戻す方法(骨軟骨片の固定術)が選ばれます。もし即座に手術を行う必要がなければ、破片を取り除くのではなく、遅れてでも修復を行うほうが望ましいとされています。軟骨は自己修復能力が低いため、できるだけ保存することが長期的な膝の健康につながります。
【まとめ】
初めての膝蓋骨脱臼(FTPD)の治療では、患者の年齢や活動レベル、再発リスクなどを総合的に考慮し、適切な方法を選択することが大切です。手術をしない場合は、リハビリを中心とした治療が基本となりますが、再発リスクが高い場合や軟骨の損傷が大きい場合には、MPFL再建術を含む手術が検討されます。
膝の安定性を取り戻し、再発を防ぐためには、適切なリハビリを行い、必要に応じて手術を受けることが重要です。医師とよく相談し、自分に合った治療方法を選びましょう。
【参考文献】 Management of first-time patellar dislocation: The ESSKA 2024 formal consensus-Part 2
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