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術後疼痛の最新ケア|痛みを抑えて早く回復するための秘訣
【術後鎮痛の重要性と最新の疼痛管理法】
手術後の痛みは、多くの患者が経験する問題です。術後の適切な鎮痛管理は、患者の回復を早め、合併症を防ぐために非常に重要です。本記事では、最新の術後鎮痛管理法と、多様な鎮痛手段を用いた疼痛コントロールについて解説します。
【術後の痛みの種類とその影響】
手術後に発生する痛みは、急性痛から慢性痛へと変化する可能性があります。急性痛は手術直後に起こる鋭い痛みであり、適切に管理しないと慢性化する恐れがあります。特に、強い術後慢性痛は2~10%の患者で発生すると報告されています。
術後の痛みが適切に管理されない場合、以下のような影響が生じることがあります。
- 回復の遅延:痛みによって動きが制限され、回復が遅れる。
- ストレス反応の増加:血圧や心拍数の上昇、免疫機能の低下など。
- 合併症のリスク増加:呼吸器系や消化器系の障害が発生しやすくなる。
【マルチモーダル鎮痛法と適切な鎮痛手段の役割】
術後の痛みを抑えるために、多角的なアプローチ(マルチモーダル鎮痛法)が推奨されています。この方法では、異なる作用機序を持つ鎮痛手段を組み合わせて使用し、痛みを効果的に管理します。
マルチモーダル鎮痛法には、以下のような鎮痛薬が含まれます。
- アセトアミノフェン:中枢神経系に作用し、鎮痛・解熱効果を発揮する。
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬):炎症を抑えることで鎮痛効果をもたらす。
- オピオイド:強力な鎮痛効果を持つが、副作用のリスクがあるため慎重に使用する。
- 局所麻酔薬:神経ブロックや硬膜外麻酔として使用される。
適切な鎮痛薬の使用により、以下のようなメリットがあります。
- 副作用の軽減:特定の鎮痛薬の使用量を減少させ、副作用(嘔気、呼吸抑制、依存性など)を軽減できる。
- 胃腸への負担が少ない:消化管障害のリスクが低い鎮痛薬を選択できる。
- 静注から経口への移行がスムーズ:術後は静注から開始し、その後経口投与に移行することで、痛みのコントロールを継続しやすい。
【術後疼痛管理の新しいアプローチ】
近年、術後回復能力強化プログラム(ERAS)が注目されています。このプログラムでは、痛み、不動、消化管機能不全の3つの要因に対処することで、術後の回復を促進します。
ERAS
- 術前準備
- 手術前に十分な説明を行い、患者の不安を軽減する。
- 栄養状態を最適化し、術後の回復を促す。
- 禁食時間を短縮し、手術前2時間までのクリアリキッド摂取を許可。
- 麻酔と術中管理
- 麻酔方法の最適化により、術後の吐き気や鎮痛の必要性を最小限に抑える。
- 術中の体温管理を徹底し、低体温による回復遅延を防ぐ。
- 適切な鎮痛薬を使用し、術後の痛みを事前にコントロール。
- 術後の疼痛管理と回復促進
- 早期に鎮痛薬を使用し、痛みを適切にコントロール。
- できるだけ早く水分・食事摂取を開始し、腸の回復を促す。
- 可能な限り早期に歩行を開始し、血栓症や筋力低下を防ぐ。
- チーム医療によるフォローアップ
- 麻酔科医、看護師、薬剤師、栄養士などが連携し、患者の回復を支援。
- 退院後のフォローアップを行い、慢性痛への移行を防ぐ。
【まとめ】
術後の適切な鎮痛管理は、患者の回復を早めるだけでなく、合併症を防ぎ、生活の質を向上させる重要な要素です。多様な鎮痛法やERASプログラムの導入により、より効果的な術後疼痛管理が可能となります。
【参考文献】
- Kehlet H, et al. Lancet 2006; 367:1618-25
- Gerbershagen HJ, et al. Anesthesiology 2013; 118:934-44
- ANZCA-FPM: Acute Pain Management; Scientific Evidence 5th Edition 2020
- 令和4年厚生労働省告示第54号
- Toms L, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2008:CD004602
- McQuay HJ, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2009:CD002763
- 熊谷雄治: 臨床医薬. 2013; 29:889-97
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