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抜釘は本当に必要?メリット・デメリットと最新研究を徹底解説
【抜釘のメリット・デメリットを徹底解説!本当に必要なのか?】
骨折や変形矯正のために体内に埋め込まれる金属製インプラント(プレートやスクリュー)は、多くの場合、骨が十分に癒合した後に抜釘(インプラントの除去)を行うことが検討されます。しかし、抜釘の必要性については議論があり、一概に「必ず行うべき」とは言えません。本記事では、抜釘のメリットとデメリットを明らかにし、その必要性について解説します。
【抜釘のメリットとは?】
- 感染や金属アレルギーのリスク軽減 インプラントが体内に長期間留まることで、まれに感染症を引き起こす可能性があります。また、一部の患者では金属アレルギー反応が発生することがあるため、抜釘によってこれらのリスクを軽減できます。
- 成長障害の予防 小児の場合、骨の成長過程でインプラントが骨の発育を妨げる可能性があります。特に、成長軟骨(骨端線)の近くに設置された場合、骨の変形を引き起こすことがあるため、成長に影響を与える可能性がある場合は抜釘が推奨されます。
- スポーツや日常生活への影響を減らす 一部のインプラントは、運動時に違和感を生じることがあります。特に、骨の表面に近いプレートなどは外部からの衝撃を受けやすく、スポーツをする際の支障となることがあるため、抜釘を検討する価値があります。
- 再手術時の困難を回避 インプラントが体内に長期間留まると、骨と癒着して取り除くことが難しくなることがあります。将来的に別の手術が必要になった際に問題となるため、早期の抜釘が推奨されるケースもあります。
【抜釘のデメリットとは?】
- 手術による合併症のリスク 抜釘は再び外科手術を伴うため、感染や神経損傷、再骨折のリスクがあります。特に、大腿骨や前腕などでは、抜釘後に骨折しやすい部位が存在することが知られています。
- 再び麻酔が必要 抜釘は全身麻酔または局所麻酔が必要となるため、麻酔に伴うリスクや入院の必要性が発生します。特に、小児や高齢者では麻酔の影響を慎重に考慮する必要があります。
- コストと入院期間の増加 抜釘は不要な手術と判断されることもあり、保険適用外となる可能性があります。また、手術に伴う医療費や入院期間の増加は患者や家族にとって経済的負担となることがあります。
- 痛みやリハビリの必要性 抜釘後は、一時的に痛みが生じることがあり、特に大きなインプラントを取り除いた場合にはリハビリが必要となることもあります。
【脊椎手術後の金属イオン上昇について】
脊椎手術では、チタンやステンレス鋼などの金属インプラントが使用されますが、術後に血清中の金属イオン(チタン、クロム、コバルト)の濃度が上昇することが報告されています。
- 金属イオンの放出メカニズム インプラントと骨が接触する部分では、微小な摩耗や化学反応により金属が溶出します。特に、インプラントのネジ部分や関節部での微細な動きが金属の摩耗を促進し、血液中へイオンとして放出されることがあります。
- チタンの血中濃度の持続的上昇 研究によると、チタンの血清中濃度は術後2年経過しても上昇したままであり、基準値の5倍以上に達することがあると報告されています。これは、骨との直接的な結合や長期間の摩耗による影響と考えられています。
- クロム・コバルトの影響 クロムやコバルトは、特にステンレス鋼製のインプラントで問題となります。これらの金属は一時的に血中濃度が上昇するものの、半年から1年以内に基準値に戻る傾向があります。しかし、一部の研究では長期間の微量な放出が続く可能性が示唆されています。
- 健康への影響 現時点では、血清中の金属イオン濃度が上昇することによる明確な健康リスクは確立されていません。ただし、金属アレルギーや慢性炎症の可能性があるため、特に長期間のインプラント使用が必要な患者では定期的なモニタリングが推奨されます。
【抜釘は本当に必要か?】
論文の分析によると、抜釘の必要性は症例ごとに異なります。一般的に、以下のケースでは抜釘が推奨されます。
- インプラントが感染の原因となっている場合
- 痛みや機能障害を引き起こしている場合
- 成長障害や変形のリスクが高い小児の場合
- 次の手術を容易にする必要がある場合
一方で、以下のようなケースでは抜釘は不要と考えられます。
- 無症状であり、インプラントが生活に支障を与えていない場合
- 骨と強く癒着しており、抜釘が困難な場合
- 再骨折のリスクが高い場合
最近の研究では、抜釘によるメリットとデメリットを天秤にかけ、慎重に判断すべきだという意見が多くなっています。特に、小児においては成長とともに状況が変化するため、定期的なフォローアップが重要です。
【参考文献】
Cundy, P. J., & Williams, N. (2024). "Metal implants in children." Journal of Children's Orthopaedics, 18(6), 557-568. https://doi.org/10.1177/18632521241293954
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