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【肩の骨折治療】上腕骨近位端骨折の手術後リハビリ、早期運動は効果的?
【上腕骨近位端骨折とは?】
上腕骨近位端骨折とは、肩に近い上腕骨の部分が折れる骨折のことを指します。この骨折は特に高齢者に多く、転倒などの軽度な外傷でも発生しやすいのが特徴です。治療法としては、軽度の骨折では保存療法(ギプスや三角巾で固定)、重度の場合は手術が行われます。
手術では「ロッキングプレート」と呼ばれる特殊なプレートや「髄内釘」と呼ばれる骨の内部に固定する器具を用いた方法が一般的です。しかし、手術後のリハビリ方法については、これまで明確な基準がありませんでした。従来は肩を動かさないよう固定する方法が主流でしたが、最近では「早期に動かした方が良いのでは?」という意見も増えてきています。
【最新研究が示す早期リハビリの効果】
2025年に発表された研究では、手術後のリハビリ方法を「従来の固定法」と「早期運動法」の2グループに分けて比較しました。
- 従来法(CG): 4週間肩を固定し、徐々に動かすリハビリを開始。
- 早期運動法(EFG): 手術直後から痛みの範囲内で自由に動かすことを許可。
その結果、24ヶ月後の機能回復(Constant Score, DASHスコアなど)において、両グループ間で大きな差は見られませんでした。つまり、「早期に肩を動かしても、機能的な回復に悪影響はない」ことが示唆されました。
さらに、合併症の発生率を比較すると、
- 従来法:30%の患者に合併症(無腐性壊死、感染など)が発生
- 早期運動法:14.2%の患者に合併症が発生
と、早期運動グループの方が合併症が少なかったのです。
【早期運動は本当に安全なのか?】
この研究結果を見ると、「早期に肩を動かす方が良いのでは?」と考えたくなります。しかし、研究者たちは「早期運動が必ずしも全員に適しているわけではない」と慎重な姿勢を取っています。
特に、
- 高齢で骨の状態が悪い患者
- 手術後の痛みが強い患者
- 他の疾患(骨粗しょう症など)を持つ患者
では、慎重なリハビリが求められます。
【まとめ:今後の治療方針は?】
この研究から分かったことは、「上腕骨近位端骨折の術後リハビリにおいて、早期運動は安全であり、従来の固定法と同等以上の効果が期待できる可能性がある」ということです。
ただし、すべての患者に適用できるわけではなく、個々の状態を考慮した上で適切なリハビリ計画を立てることが重要です。今後もさらなる研究が必要ですが、今回の研究は肩の骨折治療におけるリハビリのあり方を見直す重要な一歩となるでしょう。
【参考文献】 Crepaz-Eger U, Dankl L, Knierzinger D, Hengg C. "Postoperative Treatment of Proximal Humerus Fractures with an Early Active Motion Protocol - A Prospective Randomized Controlled Trial". Journal of Shoulder and Elbow Surgery, 2025. DOI: https://doi.org/10.1016/j.jse.2025.01.042
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