成尾整形外科病院

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大腿骨近位部骨折の手術法比較:スライディングヒップスクリューと海綿骨スクリュー、どちらが有効か?

【はじめに】

大腿骨頚部骨折.jpg

高齢者に多い股関節骨折(大腿骨頸部骨折)は、日常生活に大きな影響を与えます。手術が標準治療ですが、どの固定方法が最適なのかは長年議論されてきました。今回、国際的なランダム化比較試験(FAITH試験)が、スライディングヒップスクリュー(SHS)と海綿骨スクリュー(CS)による手術の違いを明らかにしました。本記事では、その結果と臨床への影響について解説します。

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【股関節骨折の治療法:SHSとCSの違い】

股関節骨折の治療には、骨折部を固定するためのさまざまな手術法があります。

 頚部骨折術式.jpg

- **スライディングヒップスクリュー(SHS)**:

  大きなネジ(スクリュー)を骨に固定し、骨折部の安定性を確保する方法です。特に不安定な骨折や変位した骨折に有効とされています。

 

- **海綿骨スクリュー(CS)**:

  複数の小さなスクリューを挿入する方法で、血流を維持しやすいという利点があります。現在、広く使用されている標準的な治療法です。

 

【FAITH試験の概要と結果】

FAITH試験は、50歳以上の股関節骨折患者1108人を対象に、SHSとCSの手術成績を比較した国際的な研究です。患者は無作為に2つの手術法に割り当てられ、手術後24カ月間の再手術率を評価しました。

 

- 再手術率:SHS群20%、CS群22%と、有意な差は認められませんでした(p=0.18)。

- 大腿骨頭壊死:SHS群9%、CS群5%と、SHS群で有意に多く発生(p=0.0319)。

- 術後合併症:肺塞栓症(SHS群<1%、CS群1%)、敗血症(各群1%)など、大きな差はなし。

 

【臨床への影響と考察】

試験結果から、SHSとCSのいずれも再手術率に明確な優位性は見られませんでした。ただし、**SHSは大腿骨頭壊死のリスクが高い**ことが示されました。一方で、変位骨折や喫煙者ではSHSが有利である可能性も指摘されています。

 

この結果を踏まえると、**患者ごとに最適な治療法を選択することが重要**です。特に、

- **不安定骨折や変位骨折にはSHS**が適している可能性がある。

- **骨壊死のリスクを減らすため、CSが推奨される場合もある**。

- **喫煙者や基部骨折ではSHSが有効かもしれない**。

 

【まとめ】

股関節骨折の手術法として、スライディングヒップスクリュー(SHS)と海綿骨スクリュー(CS)はどちらも一定の効果がありますが、それぞれの利点とリスクを考慮して適切な選択をすることが大切です。FAITH試験の結果を参考に、今後の臨床現場での治療方針に活かしていくことが求められます。

 

【参考文献】

Bhandari M, et al. Fracture fixation in the operative management of hip fractures (FAITH): an international, multicentre, randomised controlled trial. Lancet. 2017 Apr 15;389(10078):1519-1527.

 

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