成尾整形外科病院

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腰椎手術におけるガバペンチノイド服用の影響は?最新研究で安全性が判明!

 【ガバペンチノイドとは?その効果と懸念点】

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腰痛や坐骨神経痛の治療でよく使われる薬に、「ガバペンチノイド」があります。これは神経の痛み(神経障害性疼痛)を和らげる薬で、「ガバペンチン(商品名:ガバペン)」「プレガバリン(商品名:リリカ)」という商品名でも知られています。

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もともとはてんかんの薬でしたが、最近は「神経の圧迫で起こる痛み」への効果が期待され、整形外科でもよく処方されるようになりました。

 

しかし近年、基礎研究から「ガバペンチノイドが骨の回復を妨げるのでは?」という声が上がっています。骨の細胞もこの薬の影響を受ける可能性があるからです。

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特に、「腰椎固定術」のような「骨の癒合」が重要な手術では心配になりますね。もし術前からガバペンチノイドを飲んでいたら、手術の成功に影響するのでしょうか?

 

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【最新研究でわかった、腰椎手術への影響】

 

アメリカの研究チームは、過去5年間に腰椎固定術を受けた461人の患者さんのデータを詳しく調べました。そのうち「ガバペンチノイド」を1年以上服用していた人は108人(約23%)いました。

 

●手術の合併症や再手術への影響は?

結果は驚きでした。ガバペンチノイドを長期服用していても、以下のリスクは高くなっていませんでした。

 

- 手術後90日以内の再入院

- 手術後2年以内の再手術(特に骨癒合不全)

- 入院中の合併症や入院期間の延長

 

基礎研究では「骨の癒合が遅れるかも」と心配されていたのですが、実際の人間の手術ではそのような悪影響は見られなかったのです。

 

 ●痛みや生活の質への影響は?

手術後の「痛み」や「生活の質」も調べられました。評価には以下のような指標が使われました。

 

- VAS(痛みを0〜10点で評価)

- ODI(障害度を点数化)

- SF-12(身体・精神の健康状態)

 

どの指標でも、ガバペンチノイド服用群と非服用群で大きな差は見られませんでした。

 

【手術後の痛み止め(オピオイド)使用量は?】

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ガバペンチノイドは「オピオイド(強力な痛み止め)」の使用量を減らす目的でも使われることがあります。今回の研究では、その効果についても検証されました。

 

●結果はどうだった?

- 手術前から「プレガバリン(リリカ)」を飲んでいた人は、手術前のオピオイド使用量がやや多い傾向にありました。

- しかし、手術後のオピオイド使用量は、どのグループもほぼ同じでした。

 

つまり、ガバペンチノイドを長期間使っていても、「オピオイドを減らす効果」は特にないことがわかりました。むしろ、長く飲んでいると「効き目に慣れてしまう(耐性がつく)」のかもしれません。

 

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 【まとめ:ガバペンチノイドの長期使用は腰椎手術でも大丈夫?】

 

今回の研究から、次の3つの結論が導かれます。

 

1. ガバペンチノイドの長期服用は、腰椎固定術の手術成功や骨癒合に悪影響はない

2. 手術後の痛みや生活の質にも大きな差は出ない

3. オピオイドの節約効果は期待できないが、安全に手術を受けられる

 

基礎研究では不安視されていた骨への悪影響も、実際の人間のデータでは確認されませんでした。腰椎手術を控えている方も、ガバペンチノイドを飲んでいるからといって過度に心配する必要はなさそうです。

 

とはいえ、薬の使い方や手術のリスクは個人差が大きいもの。手術前には必ず、担当の整形外科医や脊椎専門医とよく相談しましょう。

 

 

【参考文献】

Dalton J, Huang R, Giakas A, et al. Impact of Chronic Preoperative Gabapentinoid Exposure on Surgical and Patient Reported Outcome Measures following Lumbar Fusion. Spine. Publish Ahead of Print; DOI:10.1097/BRS.0000000000005338

 

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