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ACL再建手術の再手術リスクとは?若年層だけが危険ではない理由を解説

 

ACL損傷.JPG

【はじめに】ACL再建手術後の再手術、そのリスクは若さだけじゃない

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スポーツ選手に多い前十字靭帯(ACL)損傷。手術で靭帯を再建しても、再び切れてしまい再手術が必要になる人がいます。 

これまで「若いから再手術が多い」と言われてきましたが、最新の研究では年齢だけでは説明できない複雑な要因が関係しているとわかってきました。

 

この記事では、ACL再建手術後の再手術リスクを「身体の特徴」「遺伝や筋力の問題」「スポーツ活動の影響」という3つの視点から詳しく解説します。

【身体の特徴】骨や関節の形・柔らかさが再手術のリスクに

■関節が柔らかすぎる人は要注意

サッカー選手柔軟.jpg

関節が異常に柔らかい「関節過可動性(GJH)」の人は、ACL損傷や再損傷のリスクが高いことが分かっています。 

このタイプは、遺伝的にコラーゲンという体の組織を作る力が弱く、靭帯が切れやすいのです。

 

実際に、手術後にスポーツ復帰してから1年以内に再びACLを損傷するリスクが、普通の人の約5.5倍に跳ね上がるというデータもあります。

 

「膝の反り」もリスクに直結

 

膝が後ろに反る「膝過伸展」も再手術リスクを高める要因の一つ。反りが強いほど、膝のぐらつきや靭帯への負荷が大きくなります。 

特に、膝の反りが6.5度以上あると、再建した靭帯が再び切れる確率が14.6倍になることが報告されています。

骨の形(骨形態)も大きな影響

さらに、以下のような骨の形もリスク因子です。

 

大腿骨のねじれ(過前捻)

膝の大腿骨の外側が出っ張っている(LFC形態)

脛骨の傾斜(後傾)が急(PTSが12度以上)

 

これらの特徴があると、膝のぐらつきが強くなり、靭帯への負担が増します。

 

 

 【遺伝や筋力の問題】目に見えないリスク要因にも注意

 ACL損傷には遺伝的な要素も

最近では、家族歴のある人はACLを切るリスクが約1.8倍になることが分かってきました。 

特に、コラーゲンを作る遺伝子や、炎症を起こしやすい体質の人は再手術のリスクが高まります。

筋力バランスの悪さが再手術を呼ぶ

 

大腿四頭筋(前ももの筋肉)が強すぎて、ハムストリング(太もも裏の筋肉)が弱いと、再建した靭帯に大きな負担がかかります。 

実際、ハムストリングと大腿四頭筋の筋力バランスが崩れると、再手術のリスクが約10倍になるというデータもあります。

 スライ女子サッカー選手ACL損傷5.JPG

股関節の筋力低下や動きもリスクに

 

ジャンプや方向転換時の「膝の内側への倒れ込み(ダイナミックニー外反)」も大きな問題です。 

特に女性アスリートに多く、股関節の外側の筋力不足や体幹のコントロール不足が原因となります。

 

【スポーツ活動の影響】復帰後の競技レベルと練習量が決め手に

 

レベルの高いスポーツほど再損傷しやすい

 

サッカーやバスケ、アメフト、スキーなど、切り返し動作やジャンプが多いスポーツは、どうしても再建靭帯への負荷が大きくなります。

 

試合やハードな練習が続くとリスク増

 

特に「試合でのプレー」は「練習」よりもケガのリスクが高いとされています。 

若い選手ほど試合や大会が多く、休む間もなく活動を続けることで再手術のリスクが高まってしまいます。

 

無理な早期復帰は危険

 

手術後、無理に早く復帰することで、再び靭帯を切ってしまうケースも少なくありません。 

特に筋力やバランスが戻らないまま競技に戻ると、リスクはさらに高まります。

 

【まとめ】再手術を防ぐために、知っておくべきこと

 

ACL再建手術後の再手術リスクは、「若いから」という理由だけでは説明できません。

 

- 関節や骨の形

- 遺伝や筋力バランス

- スポーツ活動量や復帰時期

 

こうした要因が複雑に絡み合って、リスクが高くなります。 

手術を受ける人も、これからスポーツ復帰を目指す人も、まずは「自分のリスク要因」を知ることが大切です。

 

そして、主治医や理学療法士と相談しながら、自分に合ったリハビリや競技復帰のタイミングを見極めましょう。

 

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【参考文献】

Zsidai B, Piussi R, Winkler PW, et al. *Age not a primary risk factor for ACL injury--A comprehensive review of ACL injury and reinjury risk factors confounded by young patient age*. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2025;1-17. doi:10.1002/ksa.12646

 

 

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