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Tommy John手術とは?プロ野球選手の肘の最新治療と復帰率を徹底解説!

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【プロ野球選手の肘の救世主!Tommy John手術の最新研究】

【Tommy John手術とは?肘の靭帯損傷と治療法】

プロ野球選手にとって、肘の怪我はキャリアを左右する大きな問題です。特にピッチャーは、投球時に強い負荷がかかるため、肘の内側側副靭帯(UCL)が損傷することがあります。これを治療するために行われるのが「Tommy John手術」です。

Tommy John手術は、1974年にアメリカの外科医フランク・ジョーブ博士によって初めて行われました。当初はUCLの再建術(新しい腱を用いて靭帯を再構築する手法)が主流でしたが、近年では「UCL修復術(リペア)」も注目されています。

修復術では、損傷した靭帯を縫合し、補強のために「インターナルブレース」と呼ばれる人工靭帯を追加することで、回復期間を短縮しながら競技復帰を目指します。最新の研究では、このUCL修復術がどの程度効果的かを検証しました。


【UCL修復術の効果は?プロ野球選手の復帰率と成績】

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アメリカの研究チームが、2016年から2021年にかけてUCL修復術を受けたプロ野球選手のデータを分析しました。その結果、以下のような傾向が見られました。

  1. 復帰までの期間
    • マイナーリーグ(MiLB)のピッチャーは平均17.5か月で復帰。
    • メジャーリーグ(MLB)のピッチャーは平均9.55か月で復帰。
    • ポジションプレーヤーは平均10.49か月で復帰。
  2. 成績への影響
    • ピッチャーの防御率(ERA)や与四球・被安打率(WHIP)は手術前後で大きな変化なし。
    • 一部の投手は球速や回転数が変化したが、全体的なパフォーマンスに顕著な悪影響は見られず。
    • ポジションプレーヤーの打撃成績(打率や出塁率)や守備成績(エラー数や捕球率)にも有意な変化なし。

この研究から、UCL修復術は選手の競技復帰をサポートし、手術後も高いパフォーマンスを維持できる可能性が高いことが分かりました。


【UCL修復術のメリットと今後の展望】

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従来のUCL再建術は、復帰までに1年以上かかるのが一般的でした。一方で、UCL修復術は回復期間が短縮されるため、選手のキャリアへの影響を抑えるメリットがあります。また、若い選手や比較的軽度の損傷の場合には、修復術が有力な選択肢となるでしょう。

しかし、手術の適応は慎重に判断する必要があります。靭帯の損傷が広範囲に及んでいる場合や、過去に同じ部位を手術した選手には、再建術のほうが適している可能性があります。

今後の研究では、より多くの症例を分析し、手術の適応基準や長期的なパフォーマンスの維持についてのデータを蓄積することが求められます。


【まとめ】

Tommy John手術は、プロ野球選手の肘の故障を克服するための重要な治療法です。特に、最新のUCL修復術は、回復期間の短縮と高い競技復帰率を実現する可能性を秘めています。

今後、さらに研究が進めば、より多くの選手が短期間で復帰し、最高のパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。肘の怪我で悩むすべてのアスリートにとって、希望の光となる治療法です。

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【引用論文】

Malige A, Uquillas C. "Ulnar collateral ligament repair in professional baseball players." Clin Shoulder Elbow 2024;27(3):278-285. DOI: 10.5397/cise.2023.01109

 

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